谷中 伸哉ってこんな人
暮らしを包んでくれる穏やかな家をつくりたい。
紀南で家づくりを考え始めた方から、よくこんな声を聞きます。
「土地はあるけれど、何から考えればいいのか分からない」
「性能の話が難しくて、判断の軸が持てない」
「この地域で、本当に快適な家ってどんな家なんだろう」
決してやる気がないわけではなく、むしろちゃんと考えたいからこそ、立ち止まってしまう。
家づくりでは、そんな状態になる方が少なくありません。
私自身、これまで多くのご相談を受ける中で感じてきたのは、
多くの迷いは「知識不足」ではなく、考える順番が整理されていないことから生まれている、ということです。
このページでは、私自身のこれまでの歩みとともに、
紀南という地域で家をつくるうえで大切にしている考え方をお伝えします。
「まだ建てると決めていない」
「何から手をつけていいか分からない」
そんな段階の方にこそ、読んでいただけたら嬉しいです。
紀南という地域で家をつくるということ
家づくりは、どこで建てるかによって、考え方そのものが大きく変わります。
紀南は、湿度が高く、夏は蒸し暑く、冬は柔らかな陽の入り方が特徴の地域です。
海と山が近く、風の向きも季節によって大きく変わります。
私はこの土地で育ち、数多くの敷地を歩き、ここで暮らす人たちの生活を見てきました。
だからこそ、気づいたことがあります。
全国共通の家ではなく、紀南の気候に寄り添った家が必要だということ。
風の通り道、視線の抜け方、冬の光の入り方──。
敷地ごとに、土地はそれぞれ違う表情を持っています。
私は毎回、その土地がもつ癖や特徴を読み取りながら、
「この場所で、どんな心地よい暮らしが無理なく続くか」
を考えるところから、家づくりを始めています。
私が大切にしている「見えない心地よさ」
家の中に入ったとき、すっと息が軽くなる瞬間があります。
光の入り方、風の抜け方、木がもつ柔らかさ、空気がまとう静けさ。
そうした「見えない心地よさ」をきちんとつくり込むことが、私が家づくりで一番大切にしていることです。
派手さはなくても、暮らしがじんわり整ってくるような家。
時間とともに馴染んでいく家。
性能や間取り、素材の話も大切ですが、それらはすべて、この心地よさを支えるための手段にすぎません。
大工の家系に生まれて

家が「建てて終わり」ではないことを、私は子どものころから当たり前のように見て育ちました。
私は、ひいじいちゃんの代から続く大工の家に生まれました。
田辺市のあたりでコツコツと家を建て続け、祖父が建てた家を父がリフォームし、
その家を私もまた手入れさせていただくことがある。
ひとつの家が、住まい手とつくり手の間で世代を越えて受け継がれていく。
その姿を間近で見て育ったことは、いまの仕事観に深くつながっています。
営業マンから、大工の見習いへ
かつて私は、某ハウスメーカーで営業をしていました。
展示場での提案、競合との比較、深夜の資料づくり…。
忙しく、学ぶことも多い日々でしたが、どうしても拭えなかったのは、
「契約後、お客様の家づくりに寄り添えない」というジレンマでした。
契約はゴールではなく、始まりのはずなのに──。
そう感じていた私は、思いきって会社を辞め、父の営む工務店で大工見習いを始めました。
そこではじめて、家が“現場で生き物のようにつくられていく”という当たり前のことに気づきます。
図面を立体に想像する職人の目、木を読む手の感覚、現場全体を見渡しながら進める段取り。
営業マン時代には見えなかった世界が、そこにはありました。
設計という「伝える仕事」へ
現場を知るほど、「ちゃんと伝えなければ、いい家はできない」と思うようになりました。
30代のころ、友人から家づくりの相談を受けたことを機に、私は設計へと軸足を移します。
独学で学びながら、お寺や町家、古い家の佇まいに触れ、
「住宅にも歴史があり、王道がある」ということを知りました。
さらに、建築家・伊礼智さんが学校長を務める住宅デザイン学校 設計教室に3年間通い、
暮らしに寄り添う設計の基礎を一から学び直しました。
形よりも「暮らしの質」、間取りよりも「居場所」、数字よりも「体の感覚」。
いまの私の設計の軸は、確かにここで育ちました。
温熱・性能を学び直す
家の心地よさは、間取りや素材だけで決まるものではありません。
冬の寒さや夏の蒸し暑さ、部屋ごとの温度差、知らないうちに感じているストレスの多くは、
断熱・気密・換気といった「見えない部分の設計」が関係しています。
そうした暮らしを支える設計をきちんと理解したいと思い、私は新住協(新木造住宅技術研究協議会)で学びを深めました。
UA値や断熱材の選び方、気密施工の現場での注意点、換気の計画、冬の日射の取り入れ方──。
性能は、ただ数値を上げればいいものではなく、暮らしを豊かにするために最適なバランスがある。
それを実感したのも、この学びの中でした。
私が一緒につくりたい家
私が住まい手と一緒につくりたいのは、完成した瞬間が一番きれいな家ではありません。
暮らしの時間とともに、じんわりと馴染んでくる家。
立つ場所が変わっても温度が乱れず、歩くたびに空気がやわらかく感じられ、どこに居ても、自然に呼吸ができる。
そんな、静かで穏やかな家です。
木の経年変化や、家族の成長や暮らし方の変化も受け止めながら、時間とともに育っていく家。
特別なことをしているわけではありません。
ただ、間取りや性能、素材を「目的」にするのではなく、
暮らしを支えるための「手段」として、一つひとつ丁寧に整えていく。
それが、設計者としての私の役割だと思っています。
少しだけ、私自身のこと

夕焼けにそまる槍ヶ岳
仕事と趣味の境界が曖昧になるほど、建築のことを考えている時間が好きです。
年に一度は山に登ります。
静かな山小屋の夜や、朝日が差し込む稜線に立つと、
「家づくりも、きっとこういうものだな」と思うことがあります。
派手ではないけれど、時間とともに静けさが増していく。
そんな感覚が、私の理想なのかもしれません。
家族は、妻と三人の子ども。
子どもたちの成長を見ていると、暮らしは想像以上に変わっていくものだと感じます。
だからこそ、変化を受け止められる家をつくりたい。
そう思いながら、日々の仕事に向き合っています。
最後に
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
家づくりは、図面や性能の話をする前に、
「どんな暮らしをしたいのか」を言葉にするところから始まると、私は思っています。
土地のこと、お金のこと、計画の順番のこと。
分からないまま進んでしまうと、あとから「こんなはずじゃなかった」と感じる場面も出てきます。
一方で、最初に考え方が整理されていれば、まだ建てると決めていなくても、判断を急ぐ必要はありません。
家づくりは、早く決めることよりも、納得して進めることの方がずっと大切です。

谷中幹工務店 代表/一級建築士 谷中 伸哉
家づくりの「考え方の順番」を整理したい方へ
・何から考えればいいのか分からない
・土地やお金の話で、頭がまとまらない
・この地域での家づくりの基準を知りたい
そんな方に向けて、「はじめての家づくり講座」を行っています。
いきなり設計の話をする場ではありません。
売り込みや契約を前提にした場でもありません。
まずは、家づくりの全体像と考え方の順番を整理する。
そのための時間です。






