2.高気密高断熱 暖かくて涼しくて光熱費を抑えた家

家づくりをしていると、性能やデザイン、間取り、素材……たくさんの“要素”があります。
その中で何より大切にしたいのは、家が「毎日の暮らし」を支える器であるということ。
美しいデザインも心地よい間取りも、地震に強い構造ももちろん大切です。
ですが――「夏は暑く、冬は寒い家」では、どんなに素晴らしい設計も性能も、その価値を発揮できません。
谷中幹工務店が家づくりで大切にしているのは、構造の安心 × 高断熱 高気密× デザイン ×素材×庭という5つの柱。
このページでは、その中から「温熱性能(断熱・気密)」についてお伝えします。
断熱性能は「家の基礎体力」
「断熱性能」と聞くと、
「数値の話?」
「専門的で難しそう…」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも本質はもっとシンプルです。
たとえば、こんな暮らしの場面を思い浮かべてみてください。
- 冬の朝、リビングが冷え切っていない
- 夏の夜、寝苦しさから解放される
- 窓辺や押入れの中で結露しにくい
- 光熱費が抑えられ、家計にもやさしい
こうした「暮らしの快適さ」の多くは、家そのものの断熱性能が決めています。
私たちの拠点・和歌山県田辺市は、冬の底冷えと夏の湿度の高さが大きな特性です。
このエリアで心地よく暮らすためには、高断熱・高気密は“あれば良い”ではなく“必須条件”だと感じています。
和歌山での高断熱住宅については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
建物の燃費計算 ―― “快適さ”を数値で裏切らない

車と同じように、家にも「燃費」があります。
高性能な車が少ない燃料で遠くまで走れるように、
高性能な家は少ないエネルギーで一年を通して快適に暮らすことができます。
家の燃費を決める要素には、
- UA値(断熱性能)
- 日射取得・日射遮蔽のバランス
- 換気や室温のコントロール
- 暮らし方・住まい方
など、さまざまなものがあります。
ここで大切なのは、「UA値が良ければ良い家」というわけではないということです。
和歌山のような温暖地域では、冬の日射熱を“取り入れる”ことも同じくらい重要です。
UA値だけを追いかけて窓を減らしすぎると、
- 家の中が暗く、閉鎖的になる
- 冬のあたたかい日射が入らず、かえって寒く感じる
といった、本末転倒な状態を招くこともあります。
そのため当社では、新住協で学んだ最新の温熱理論と、実際の建物データを用いながら、
プランニングの段階から専用ソフト(QPEXなど)で建物の燃費計算を行い、「断熱」「日射」「暮らし」のバランスを整えたご提案を行っています。
断熱材選びや熱抵抗値(R値)の考え方については、
失敗しない断熱材選び|厚み・熱伝導率を踏まえた熱抵抗値(R値)の知識と施工ポイント
、熱抵抗値を計算してみよう!断熱材の性能をきちんと理解する大切な数値 もあわせてご覧ください。
数字としての性能だけではなく、「この家でどんな一日を過ごすのか」までをイメージしながら、最適な断熱計画を考えていきます。
関連ブログ:
断熱性能より燃費性能が大切です。QPEXの活用
気密は「測ってはじめてわかる性能」 ― 全棟で気密検査を実施

気密検査の様子
断熱性能は、設計段階で計算することができます。
一方で気密性能(C値)は、実際のお家を測定してみないと絶対に分からない性能です。
どれほど図面上で気を配っていても、現場での施工にバラつきがあれば、狙った気密性能は発揮されません。
つまり、気密性能は「工務店の施工力」がもっともよく現れる部分だと言っても良いかもしれません。
気密が十分に確保されていない家では、
- すきま風が入り、冬の足元が冷える
- 夏は外の熱気や湿気が入り込み、ムッとした暑さになる
- 冷暖房の効率が落ち、光熱費が高くなる
- 壁の中で結露が起こりやすくなり、家の寿命を縮めるリスクが高まる
といった、さまざまなデメリットが発生します。
だからこそ当社では、全ての現場で気密検査を実施しています。
1棟1棟専用の機械を使って測定し、C値(相当隙間面積)の結果をきちんと確認。
必要に応じて現場での手直しや改善を行いながら、「図面どおりの性能」ではなく「実際の建物での性能」を確保していきます。
関連ブログ:
気密測定 気密が重要な2つの理由
敷地を読む ― 性能を最大限に活かす“設計の眼”
いくら断熱・気密性能を高めても、
その土地の条件に合っていない家づくりをしてしまうと、性能は十分に活かされません。
田辺市周辺には、
- 海からの風や山からの冷気が入りやすい場所
- 夏の日差しが強く差し込む南向きの高台
- 周りの建物が近く、視線や日当たりへの配慮が必要な住宅地
など、さまざまな敷地条件があります。
その土地でいちばん心地よく暮らすためには、
- 冬の日射をしっかりと取り込めるか
- 夏の日射を軒や庇でどう遮るか
- 視線の抜けをどう設計に取り込むか
- 隣家の窓や道路からの視線をどうコントロールするか
- 音やにおい、生活リズムといった“暮らしの気配”をどう受け止めるか
といったポイントを一つひとつ丁寧に読み解いていく必要があります。
当社では必ず敷地に何度も足を運び、季節や時間帯を変えながら、光の当たり方や風の抜け方を体感します。
さらに、日当たりシミュレーションなどのツールも活用し、「その土地だからこそ心地よい家」を設計していきます。
土地選びの考え方については、土地探しのポイント や、その土地、本当に買って大丈夫?家を建てる前に知るべき注意点 も参考になると思います。
机上の計算だけに頼るのではなく、
現場で肌で感じる情報と、物理的なデータの両方を組み合わせてプランを考えること。
それが、谷中幹工務店が大切にしている「敷地を読む」という姿勢です。
性能 × 暮らし × 設計思想をつなげて家をつくる
ここまで、「断熱」「気密」「敷地を読む」という3つの観点から、当社の家づくりの考え方をお伝えしてきました。
もちろん、UA値やC値、燃費性能といった数字は、とても重要です。
しかし、谷中幹工務店が本当に大切にしているのは、「数字の先にある、暮らしの風景」です。
たとえば、
- 冬の朝、素足で歩いてもひんやりしない床
- 夏の夕方、窓から風に揺れる植栽を愛でるリビング
- 家族が自然と集まりたくなるダイニング
- 庭とつながる、半屋外のような心地よい居場所
こうした時間を支えているのが、見えない部分の性能であり、敷地を読み解いた設計です。
性能と暮らし。
数字と感性。
そのどちらか一方ではなく、両方を丁寧につないでいくこと。
それが、私たちが考える「長く愛着を持って暮らせる家づくり」です。
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