2.高断熱高気密とは? 暖かくて涼しくて光熱費を抑えた家にするためには?
冬暖かく、夏涼しい家をつくるために大切なこと

家づくりを考え始めると、性能、デザイン、間取り、素材、予算など、たくさんの要素があります。
その中で私たちが大切にしているのは、家は「毎日の暮らし」を支える器であるということです。
美しいデザインも、心地よい間取りも、安心できる構造も、もちろん大切です。
ですが、夏は暑く、冬は寒い家では、その良さを十分に感じながら暮らすことはできません。
だから谷中幹工務店では、構造の安心 × 温熱性能 × デザイン × 素材 × 庭を大切にしながら、家づくりを考えています。
このページでは、その中でも特に「冬暖かく、夏涼しい家をどうつくるのか」について、私たちの考え方をお伝えします。
冬暖かく、夏涼しい家には順番があります
家づくりのご相談を受けていると、
「断熱をしっかりすれば暖かい家になりますよね?」
というお話になることがあります。
もちろん、断熱はとても大切です。
ですが、断熱だけでは少し片手落ちです。
高断熱・高気密の家の目的は、断熱材を厚くすることそのものではありません。
本来の目的は、
- 冬は暖かく
- 夏は涼しく
- できるだけ少ないエネルギーで
- 一年を通して快適に暮らせること
そのためには、断熱材の性能だけでなく、家の温度環境そのものを設計することが必要になります。
私たちは、冬暖かく夏涼しい家をつくるには、きちんとした順番があると考えています。
温熱設計 → 燃費 → 空調
この順番です。
実際の設計では、温熱設計と燃費計算を何度も行き来しながら少しずつ整えていきますが、考え方の軸としてはこの順番がとても大切です。
先に設備を考えるのではなく、まず建物そのものでどこまで快適にできるかを考える。
そのうえで、その家に必要なエネルギー量を把握し、最後に無理のない空調計画を組み立てていく。
この順番で考えると、家の心地よさは大きく変わります。
温熱設計とは、断熱材を決めることだけではありません
温熱設計というと、断熱材の種類や厚みを決めて、断熱性能を整えることだと思われがちです。
ですが実際には、それだけではありません。
まず考えるのは、その敷地に合わせて、その家の温熱環境をどう整えるかです。
- どこに窓をつくるのか
- どこから光を入れるのか
- 冬の日射をどう取り込むのか
- 夏の日射をどう遮るのか
- 庇や軒の出をどうするのか
こうしたことによって、家の心地よさは大きく変わります。
特に冬の日射は、明るさをもたらすだけでなく、室内を暖めてくれる大切なエネルギーです。
一方で、夏の日射は室温を大きく上げる原因にもなります。
だから温熱設計では、冬に日射を取り込むことと、夏に日射を遮ることの両方を考えます。
そのため私たちは、南側の窓をただ大きく取ればよいとは考えていません。
南の窓は、冬の日差しを取り込みやすい反面、取り方を誤ると夏の暑さにもつながるからです。
もちろん、開放的な空間が心地よいと感じる住まい手のために、また冬の日射を活かすために、大きく開いた方がよい場合もあります。
ですが一方で、ご家族の暮らし方や、その窓の先に見える景色、その場所でどんな時間を過ごしたいかによっては、あえて絞った方がより心地よくなることもあります。
私たちは、性能のためだけに窓を決めるのではなく、暮らし方や景色も含めて、その家にとってちょうどよい取り方を探していきます。
いわゆるパッシブ設計という考え方も、ここにつながっています。
機械設備に頼る前に、まず建物そのもので冬は暖かさを取り込み、夏は暑さを防ぐ。
その積み重ねが、無理のない心地よさにつながっていきます。
断熱性能は「家の基礎体力」です
断熱性能と聞くと、数値の話で難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも本質はもっとシンプルです。
たとえば、こんな暮らしの場面です。
- 冬の朝、リビングが冷え切っていない
- 夏の夜、寝苦しさから解放される
- 窓辺や押入れの中で結露しにくい
- 光熱費が抑えられ、家計にもやさしい
こうした暮らしの快適さの多くは、家そのものの断熱性能に支えられています。
私たちの拠点である和歌山県田辺市周辺は、冬の底冷えがあり、夏は湿度が高い地域です。
この地域で心地よく暮らすためには、高断熱・高気密は「あればよい」ではなく、土台となる必須条件だと考えています。
和歌山での高断熱住宅については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
和歌山で高断熱住宅を建てるには?断熱のメリットデメリットの解説
大切なのは「UA値」だけではなく、家全体の燃費です

車と同じように、家にも「燃費」があります。
高性能な車が少ない燃料で遠くまで走れるように、
高性能な家は少ないエネルギーで一年を通して快適に暮らすことができます。
家の燃費を決める要素には、
- UA値(断熱性能)
- 日射取得・日射遮蔽のバランス
- 換気や室温のコントロール
- 暮らし方・住まい方
など、さまざまなものがあります。
ここで大切なのは、UA値が良ければ、それだけで快適な家になるわけではないということです。
和歌山のような温暖地域では、冬の日射熱をうまく取り入れることも同じくらい大切です。
UA値だけを追いかけて窓を減らしすぎると、
- 家の中が暗く、閉鎖的になる
- 冬の日射が入らず、かえって寒く感じる
といった本末転倒な状態になることもあります。
だから私たちは、数字だけを見るのではなく、その家が実際にどれくらいのエネルギーを必要とするのかを考えます。
冬にどれくらい暖房が必要になるのか。
夏にどれくらい冷房の負荷がかかるのか。
そうしたことまで含めて考えるのが、燃費計算です。
新住協で学んだ温熱の考え方と、実際の建物データをもとに、QPEXなどの温熱計算シミュレーションソフトを使いながら、プランの段階から「断熱」「日射」「暮らし」のバランスを整えていきます。
一度計算して終わりではありません。
- 窓の取り方を変えてみる
- 日射の入り方を見直してみる
- 庇や軒の出を調整してみる
そうした試行錯誤を繰り返しながら、その敷地と、そのご家族の暮らし方に合った最適解を探していきます。
断熱材選びや熱抵抗値(R値)の考え方については、
失敗しない断熱材選び|厚み・熱伝導率を踏まえた熱抵抗値(R値)の知識と施工ポイント、
熱抵抗値を計算してみよう!断熱材の性能をきちんと理解する大切な数値
もあわせてご覧ください。
関連ブログ:
断熱性能より燃費性能が大切です。QPEXの活用
気密は「測ってはじめて分かる性能」です

気密検査の様子
断熱性能は設計段階で計算できます。
一方で、気密性能(C値)は、実際の建物を測定してみないと分からない性能です。
どれほど図面上で気を配っていても、現場での施工にばらつきがあれば、狙った気密性能は発揮されません。
つまり気密性能は、工務店の施工力がよく表れる部分でもあります。
気密が十分に確保されていない家では、
- すきま風が入り、冬の足元が冷える
- 夏は外の熱気や湿気が入り込み、ムッとした暑さになる
- 冷暖房の効率が落ち、光熱費が高くなる
- 壁の中で結露が起こりやすくなり、家の寿命を縮めるリスクが高まる
といったことが起こりやすくなります。
だからこそ当社では、全棟で気密測定を実施しています。
一棟一棟、専用の機械で測定し、C値の結果を確認する。
必要に応じて手直しや改善も行いながら、図面上の性能ではなく、実際の建物での性能を確保していきます。
関連ブログ:
気密測定 気密が重要な2つの理由
敷地を読むことも、温熱設計の大切な一部です
いくら断熱・気密性能を高めても、その土地の条件に合っていない家づくりをしてしまうと、性能は十分に活きません。
田辺市周辺には、
- 海からの風や山からの冷気が入りやすい場所
- 夏の日差しが強く差し込む南向きの高台
- 周りの建物が近く、視線や日当たりへの配慮が必要な住宅地
など、さまざまな敷地条件があります。
その土地でいちばん心地よく暮らすためには、
- 冬の日射をしっかり取り込めるか
- 夏の日射を軒や庇でどう遮るか
- 視線の抜けをどう設計に取り込むか
- 隣家や道路からの視線をどうコントロールするか
- 音やにおい、生活リズムといった暮らしの気配をどう受け止めるか
といったことを一つひとつ丁寧に読み解いていく必要があります。
当社では、必ず敷地に足を運び、光の当たり方や風の抜け方、その場所に立ったときの感覚を確かめます。
さらに必要に応じて日当たりシミュレーションなども活用しながら、その土地だからこそ心地よい家を考えていきます。
机上の計算だけに頼るのではなく、
現場で肌で感じる情報と、物理的なデータの両方を組み合わせてプランを考えること。
それが、谷中幹工務店が大切にしている「敷地を読む」という姿勢です。
土地選びの考え方については土地探しのポイント や、その土地、本当に買って大丈夫?家を建てる前に知るべき注意点 などのブログも参考になると思います。
最後に考えるのが、空調計画です
ここまで整えて、はじめて空調計画を考えます。
先に大きな設備を入れるのではなく、
まず建物そのもので温度環境を整え、
そのうえで必要な冷暖房の量を見極める。
そうすると、過不足の少ない、無理のない空調計画が見えてきます。
つまり、
温熱設計 → 燃費 → 空調
という順番は、単なる理屈ではなく、気持ちよく、無駄なく暮らすための順番です。
性能の先にあるのは、暮らしの風景です
ここまで、断熱、気密、燃費、敷地を読むこと、空調計画についてお伝えしてきました。
もちろん、UA値やC値といった数字はとても大切です。
ですが、谷中幹工務店が本当に大切にしているのは、数字の先にある暮らしの風景です。
- 冬の朝、素足で歩いてもひんやりしにくい床
- 夏の夕方、窓の外の植栽を眺めながら過ごす時間
- 家族が自然と集まりたくなるダイニング
- 庭とつながる半屋外のような心地よい居場所
こうした日々を支えているのが、見えない部分の性能であり、敷地を読み解いた設計です。
性能と暮らし。
数字と感性。
そのどちらか一方ではなく、両方を丁寧につないでいくこと。
それが、私たちが考える、長く愛着を持って暮らせる家づくりです。
実際の空気感は、見学会で体感していただけます
こうしたことは言葉や数字でもお伝えできますが、
実際の空気感や光の入り方、窓の取り方による心地よさは、やはり体感していただくのが一番早いです。
谷中幹工務店では、「木の家暮らしの見学会」を開催しています。
実際に暮らしている木の家をご覧いただきながら、
窓の取り方や光の入り方、温熱の考え方についてもお話ししています。
これから家づくりを考え始める方にとって、
写真や図面だけでは分かりにくいことを整理するきっかけになればと思っています。
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