地盤調査ってどんな事を調べてるの?
地盤の許容支持力と換算N値の関係
和歌山県田辺市で木の家の新築、リノベーション、リフォームをしてます
谷中幹工務店の谷中伸哉です。
今回は、建築の世界でとても大切な「地盤の許容支持力」と「換算N値」について説明します。
これらをまとめた地盤調査報告書はは家を建てるときに必ず見ることになる報告書です。
とても重要な役割を果たすので、ぜひ覚えておいてくださいね。
地盤って何?
まず、地盤(じばん)とは何かから説明します。
地盤は簡単に言うと、地面のことです。
ごくごく当たり前ですが、家や建物は地面の上に建てられます。
その地面の強さや性質を調べることがとても大切なんです。
たとえ話:ケーキの層
地盤をケーキにたとえてみましょう。
ケーキの層はスポンジやクリーム、フルーツなどいろいろな材料でできています。
地盤も同じように、砂や粘土、岩などいろいろな層でできているんです。
そして、ケーキの層がしっかりしているかどうかが
ケーキ全体の強さに関わってくるのと同じように
地盤の層の強さが建物の安定性に関わってきます。
許容支持力とは?
次に「許容支持力(きょようしじりょく)」について説明します。
許容支持力とは、地盤が建物の重さをどれだけ支えられるかを表す値です。
つまり、地盤がどれくらいの重さに耐えられるかということです。
たとえ話:おんぶ
これもたとえ話で考えてみましょう。
あなたが友達をおんぶするとします。
あなたがどれくらいの重さまでおんぶできるかが「許容支持力」です。
もし友達が軽ければ簡単におんぶできますが、
重い友達をおんぶしようとすると大変ですよね。
同じように、地盤も重い建物を支えるためには
強い地盤である必要があります。
換算N値とは?
次に「換算N値(かんさんエヌち)」について説明します。
換算N値は、地盤の硬さを示す値です。
これは、地盤調査で使われる値の一つで
地盤がどれくらい硬いかを調べるために使われます。
たとえ話:ハンマーで叩く
地盤の硬さを調べるのは、まるでハンマーで
地面を叩いてみるようなものです。
地面が硬いとハンマーが跳ね返ってくる感じがしますが
柔らかいとハンマーが地面に沈み込んでしまいます。
換算N値は、地盤がどれくらい硬いかを数値で表したものです。
許容支持力と換算N値の関係
さて、ここまでで「許容支持力」と「換算N値」についてお話してきましたが、
次に、この二つの関係について説明します。
地盤の硬さと支えられる重さ
地盤が硬いほど、許容支持力も大きくなります。
つまり、硬い地盤は重い建物を支えることができるということです。
逆に、地盤が柔らかいと許容支持力は小さくなり
重い建物を支えることが難しくなります。
具体例
換算N値が高い(つまり地盤が硬い)場所に建てる建物は
許容支持力が高いため、重い建物である
ビルやマンションなどを建てることができます。
一方、換算N値が低い(つまり地盤が柔らかい)場所では、
それらの建物がそのままでは建てられなくなります。
許容支持力の計算方法
ここからは、許容支持力の計算方法について詳しく説明します。
計算方法にはいくつかの種類がありますが
ここでは代表的なものを紹介します。
1. 地盤の種類別の計算法
地盤の種類によって、許容支持力の計算法が異なります。
以下に、一般的な地盤の種類とその計算法を示します。
a. 砂地盤の場合
砂地盤の許容支持力は、次の式で計算されます。
qa=N×0.25×σ0
各単位は下記を指しています。
- qaは許容支持力(kN/m²)
- N は換算N値
- σ0 は有効垂直応力(kN/m²)
b. 粘土地盤の場合
粘土地盤の許容支持力は、次の式で計算されます。
qa=1.5×c
ここでの各単位は下記を指します。
- qaは許容支持力(kN/m²)
- c は粘着力(kN/m²)
2. 地盤調査データを基にした計算法
地盤調査によって得られるデータを基に
より詳細な許容支持力を計算することもできます。
この場合、調査結果から換算N値やその他の地盤特性を用いて計算します。
a. SPT(標準貫入試験)データの利用
SPT(Standard Penetration Test)データを利用する場合、
換算N値を用いて次の式で許容支持力を計算します。
qa=N×0.4
ここでの単位は下記となります。
- qa は許容支持力(kN/m²)
- N は換算N値
換算N値の計算方法
換算N値は、地盤調査の結果から得られる値です。
代表的な地盤調査方法として、SPT(標準貫入試験)があります。
SPTでは、一定のエネルギーを地面に加えて、標準貫入棒を打ち込んでいきます。
そのときの打撃回数を基に換算N値を算出します。
たとえ話:ゴムボールの跳ね返り
換算N値を計算する方法をゴムボールの跳ね返りにたとえてみましょう。ゴムボールを地面に落としたとき、硬い地面だとボールは高く跳ね返りますが、柔らかい地面だとボールはあまり跳ね返りません。SPTでは、ハンマーで地面を叩く代わりに、標準貫入棒を地面に打ち込んで、どれくらいのエネルギーでどれくらいの深さまで打ち込めるかを測定します。この結果が換算N値です。
SPT(標準貫入試験)の手順
- ボーリング:まず、ボーリングマシンを使って地面に穴を掘ります。
- 標準貫入試験:掘った穴に標準貫入棒を挿入し、一定のエネルギーで打撃を加えます。
- 打撃回数の記録:貫入棒が一定の深さ(通常は30cm)まで打ち込まれるのに必要な打撃回数を記録します。
- 換算N値の算出:記録した打撃回数を基に換算N値を計算します。
b. スクリューウエイト貫入試験の利用
スクリューウエイト貫入試験(SWPT)は、地盤の硬さを測定するもう一つの方法です。これにより、地盤の支持力を詳細に評価できます。
住宅の場合はこの試験方法を用いられています
スクリューウエイト貫入試験の手順
- 機械の設置:スクリューウエイト機を地面に設置します。
- 貫入:スクリュー(ねじのような装置)を地面にねじ込みます。このとき、一定の重さのウエイトをかけながら貫入していきます。
- 貫入抵抗の測定:スクリューが地面にねじ込まれるときの抵抗力を測定します。
- 換算N値の算出:測定した抵抗力を基に換算N値を計算します。
たとえ話:ネジを壁に打ち込む
スクリューウエイト貫入試験をネジを壁に打ち込むことにたとえてみましょう。
硬い壁にネジを打ち込むときには、強い力が必要ですが、柔らかい壁なら少ない力で済みます。
同じように、スクリューウエイト貫入試験では、地盤の硬さによって
スクリューをねじ込むときの抵抗力が変わります。
この抵抗力を測定することで、地盤の硬さや支持力を評価します。
換算N値と許容支持力の関係
換算N値と許容支持力の関係は、地盤の強度を評価する上で非常に重要です。
換算N値が高いほど、地盤は硬く、許容支持力も高くなります。
これにより、重い建物を安全に支えることができます。
たとえ話:体重計と筋力
換算N値と許容支持力の関係を、体重計と筋力にたとえてみましょう。
体重計に乗ると、自分の体重が表示されます。
この体重を支えるためには、足の筋力が必要です。
足の筋力が強ければ、重い体重でも支えることができます。
同じように、地盤の硬さ(換算N値)が高ければ
、高い許容支持力を持つことができ、重い建物を支えることができます。
地盤調査の重要性
建物を建てる前には、必ず地盤調査を行います。
この調査によって、地盤の換算N値や許容支持力がわかります。
これにより、安全に建物を建てるための基礎工事の方法が決まります。
たとえ話:健康診断
地盤調査は、まるで健康診断のようなものです。
あなたが健康診断を受けて自分の体の状態を知るように、
地盤調査をすることで地盤の状態を知ることができます。
そして、その結果に基づいて、どのような対策を取るかが決まるのです。
基礎工事の方法
地盤調査の結果に基づいて、基礎工事の方法が決まります。
基礎工事とは、建物を支えるための土台を作る工事のことです。
地盤がしっかりしていれば普通の基礎工事で済みますが
地盤が柔らかい場合は特別な対策が必要です。
たとえ話:ベッドのマットレス
基礎工事の方法を選ぶのは、まるでベッドのマットレスを選ぶようなものです。硬いマットレスが好きな人もいれば、柔らかいマットレスが好きな人もいますよね。地盤の状態に合わせて、最適な基礎工事の方法を選ぶことで、建物が安定して長持ちするのです。
基礎工事の種類
- 直接基礎:地盤が十分に強い場合、建物の重さを直接地盤に伝える基礎工事です。これは、地面にコンクリートを打ち込んで土台を作る方法です。
- 杭基礎:地盤が柔らかい場合、建物の重さを支えるために杭を地面に打ち込む基礎工事です。杭は地盤の深い部分まで届き、しっかりとした支持力を確保します。
- 改良地盤基礎:地盤が非常に柔らかい場合、地盤そのものを改良して強度を高める基礎工事です。これは、地盤にセメントを混ぜて固める方法などがあります。
許容支持力の計算式の違い
ここでは、許容支持力を求めるための計算式の違いについて説明します。
代表的な3つの計算式について見ていきましょう。
1. 告示1113号の計算式
告示1113号の計算式は次の通りです。
ここで
- は許容支持力(kN/m²)
- はスクリューウエイト貫入試験による換算N値
この式は、基礎の支持力を計算するための基本的な式であり、スクリューウエイト貫入試験の結果を直接利用します。ただし、この計算式では換算N値が0でも許容支持力が30kN/m²となるため、地盤が全く支持力を持たない場合でも一定の値が出てしまうという問題があります。
2. 住品協推奨式
住品協(住宅品質確保促進協会)の推奨する計算式は次の通りです。
ここで、
- は許容支持力(kN/m²)
- はウエイト(荷重)の効果を考慮した補正係数
- はスクリューウエイト貫入試験による換算N値
この式では、ウエイト(荷重)の影響を考慮して許容支持力を計算します。これは、実際の地盤の強度をより正確に反映させるための補正を行っていることを示しています。
3. 日本建築学会推奨式
日本建築学会の推奨する計算式は次の通りです。
qa=30Wsw+0.64Nsw
ここで、
- a は許容支持力(kN/m²)
- はウエイト(荷重)の効果を考慮した補正係数
- はスクリューウエイト貫入試験による換算N値
この式も、住品協推奨式と同様にウエイトの影響を考慮していますが、係数が0.6ではなく0.64になっています。これは、日本建築学会が推奨する地盤特性に基づいて調整された値です。荷重の影響を考慮することで、地盤の硬さだけでなく、実際の荷重の影響も反映されるため、より精度の高い許容支持力を計算することができます。
地耐力と地盤の長期許容応力度の関係
次に、地耐力と地盤の長期許容応力度の関係について説明します。
地耐力とは?
地耐力(ちたいりょく)とは、地盤が建物を支える力のことです。建物の基礎が地盤にどれだけの重さをかけても、地盤が沈まないように支えることができる力を指します。地耐力は、地盤の種類や密度などによって変わります。
長期許容応力度とは?
長期許容応力度(ちょうききょようおうりょくど)とは、地盤が長期間にわたって建物の重さを支えることができる長期的な地盤の支持力を事をさします。これは、地盤が変形したり破壊されたりしないようにするために、安全な範囲で設定される値です。
地耐力と長期許容応力度の関係
地耐力と長期許容応力度は密接に関連しています。地耐力が高いほど、長期許容応力度も高くなります。つまり、強い地盤ほど長期間にわたって建物を支えることができるということです。
住宅に必要な地耐力と長期許容応力度
住宅に必要な地耐力
一般的な住宅に必要な地耐力は、20〜30kN/m²程度とされています。これは、木造住宅や軽量鉄骨住宅などの一般的な住宅が安全に建設できる地盤の強さを示しています。
基礎工事の方法
地盤調査の結果に基づいて、基礎工事の方法が決まります。基礎工事とは、建物を支えるための土台を作る工事のことです。地盤がしっかりしていれば普通の基礎工事で済みますが、地盤が柔らかい場合は特別な対策が必要です。
たとえ話:ベッドのマットレス
基礎工事の方法を選ぶのは、まるでベッドのマットレスを選ぶようなものです。硬いマットレスが好きな人もいれば、柔らかいマットレスが好きな人もいますよね。地盤の状態に合わせて、最適な基礎工事の方法を選ぶことで、建物が安定して長持ちするのです。
まとめ
最後に、今日のポイントをまとめましょう。
- 地盤は建物の土台となる地面のこと。
- 許容支持力は地盤が建物の重さをどれだけ支えられるかを表す値。
- 換算N値は地盤の硬さを示す値。
- 地盤が硬いほど許容支持力が高く、重い建物を支えることができる。
- 建物を建てる前には地盤調査を行い、その結果に基づいて基礎工事の方法を決める。
- 許容支持力の計算方法には、地盤の種類別の計算法や地盤調査データを基にした計算法がある。
- 換算N値の計算方法は、SPT(標準貫入試験)やスクリューウエイト貫入試験などの地盤調査によって行われる。
- 許容支持力を求めるための計算式には、告示1113号の計算式、住品協推奨式、日本建築学会推奨式があり、それぞれ特徴がある。
- 地耐力は地盤が建物を支える力のことであり、一般的な住宅に必要な地耐力は20〜30kN/m²程度である。
- 長期許容応力度は地盤が長期間にわたって建物の重さを支えることができる最大の応力度のことである。
地盤の許容支持力と換算N値、地耐力と長期許容応力度は、建物の安全性に直結する重要な要素です。これらをしっかり理解して、安全で安定した建物を建てることが大切です。
建築の世界はとても面白いので、ぜひ興味を持って学んでみてくださいね!