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そとん壁 メリット デメリット 風合と質感のある手作りの素材を職人の手仕事で仕上げる

外壁材 そとん壁とは

建物の外観を印象付ける外壁材。建物を風雨から守る外壁材。

そんな外壁材のなかで左官仕上げの『そとん壁』は当工務店でよく採用して頂いており、またわたし達のお気に入りでもあります。風合と質感ある素材で、それを手仕事によって仕上げていく事でもたらせる何とも言えない美しさ。これは写真ではなかなか全てが伝わらないのが残念なところ。さらにその美しさのみならず外壁としての必要な性能を持ち合わせたものであります。

植栽をしつらえたファサード

そとん壁W-129と緑 植栽をしつらえたファサード

そとん壁W-129 別名伊礼色

そとん壁W-129 別名伊礼色

振り返れば今から12年前の2004年、今よりももっと窯業サイディングの建物が多かった時代。窯業サイディングは板状になっていてどうしてもその継ぎ目にはコーキングが必要となります。サイディング自体も表面の塗装により防水性をもたせているためメンテナンスとして再塗装が必要なうえ、コーキングの寿命はもっと短い。見た目にも継ぎ目が出来るので美しくない。シームレス(継ぎ目のない)外壁はつくれないものだろうかと色々と探し回っていた時に出会った素材です。そとん壁をきっかけにその開発に関わられた敬愛する建築家 伊礼智さんを知ったわけですから、私としても感慨深いものがあります。

シラス 天然のセラミック

そとん壁はシラスが主原料です。シラスとは2万5千年前の火山活動によって噴出した巨大火砕流が堆積したもの。マグマが生みだしたもので、噴火したマグマが急激に冷やされたため噴火直前のマグマの状態を残した物質です。マグマが細かい粉末に姿を変えたものであるシラスは無機質な岩石が細かく分解された状態と同じものであり、植物や微生物による作用が起こる前の養分の持たない『原始的な土』といえるものです。
そんなマグマの超高温で焼成されたシラスは人工的には作れない多孔質の微粒子。非晶質(形がふぞろい)の占める割合が60%~80%もあることで他の火山噴出物とは決定的に異なる極めて特異な性質を持っています。非晶質の場合は分子構成が不安定で活性化し、環境によっては触媒反応がおきやすくなることから、消臭・分解、殺菌、イオン化などの機能を発揮すると考えられています。これはそとん壁の特徴にも大きく関係してくるところです。一般的に知られている火山灰とはその成り立ちから大きく違います。

美しさと手づくり

シラス独特の風合、質感、それは左官職人の手により完成します。その出来上がったそとん壁の素材感、美しさは清々しさも感じます。
実はそとん壁はローテクで作られており、宮城県の農家の方々が原材料を工場で受け取り、自宅の納屋などで加工してまた工場に納められています。そとん壁の袋には農産物の直売所のように作られた方のお名前があります。メーカーさん曰く、新・二毛作。工場は認定工場との事ですがあくまでもローテク、省エネにこだわってます。手作りの素材を、また左官職人さんが手造りする。住まいは買うものではなく造るもの、そうでありたいです。もちろん、継ぎ目のないシームレスな仕上がりも美しさに大きく寄与してます。

そとん壁 W-121

そとん壁 W-121

そとん壁W-121と杉板ウッドロングエコ仕上げ

そとん壁W-121と杉板ウッドロングエコ仕上げ

防水と透湿

外壁にはいくつかなくてはならない性能があり、そのひとつが防水です。こちらの画像は建物を室内側から見ている形となっていまして、左側のモルタルには水(雨水)滲んできてますが、右側そとん壁には全く滲んでないのがお分かり頂けると思います。

そとん壁とモルタル壁の防水性比較試験

そとん壁とモルタル壁の防水性比較試験

モルタルはそれ自体には防水性がなく表面の塗装にその役割を期待しているのと比べて、そとん壁はそれ単体でその粒子構造により高い防水性を発揮する事が出来るのです。これはそとん壁が下塗りと上塗りの2層構造になっている事に秘密があります。下塗りには超微細なシラスを、上塗りにはそれより大きい粒子のシラスを使用する事により、そとん壁に浸み込んだ雨水は隙間が細かい下塗り材にほとんど浸み込むことなく、重力によって下方向に引っ張られながら、隙間が大きく抵抗の少ない上塗り材の表面へと流れていきます。これを『くの字流動現象』といいます。物理的に防いでいるのです。

雨水浸透限界線イメージ

雨水浸透限界線イメージ

また下塗り材に使われる超微細なシラスは水蒸気の細かい粒子は通しますが、雨水の大きな粒子は通しません。これによってモルタルのような表面への塗装が必要なく、これがそとん壁の大きな特徴、防水しながら透湿するへと繋がっていくのです。下の画像はその実験。そとん壁を仕切りに上に水、下に空気があります。上の白い玉の様に見えているのは空気。水は止めるが空気は通す。にわかに信じがたい性能が一目で分かるます。まさしく百聞は一見にしかず。これによって建物壁体内の湿気を屋外に排出する事が可能になり建物の耐久性の向上につながっていきます。

そとん壁の通気テスト

そとん壁の通気テスト

耐候性とメンテナンス性

シラスは無機質の天然のセラミック、紫外線や風雨による劣化おきにくいです。また塗料などの樹脂(有機質)と違い無機質はカビなどの養分とならないのでカビは基本的には生えません。ホコリなどが飛んできて付着する事によって生える事も考えられるので全くではありませんが・・
色も天然の岩を砕いたものを顔料として使っていることもあり退色も起こりにくいです。コーキングも使用しないため窯業サイディングやモルタル壁に比べてランニングコスト(メンテナンスコスト)のかからない外壁材といえるでしょう。たしかにイニシャルコストは高くなりますが、20年30年と家にかけなければならないコストをトータルで考えると高くないと考えてます。

気になるそとん壁のお手入れについては こちらの記事

そとん壁のメンテナンス

デメリット 施工に注意が必要

そとん壁、上塗りは降雨の予報が48時間以内にある場合は施工を控えるか雨養生が必要なため、天候の影響を大きく受けてしまい、工期が遅れる恐れがあるので、工事期間を短くしたい場合には不利です。

また、濃い色の仕上げは白華現象といって気温が低い時期の施工では白ぼけるリスクもあります。対処方法は色々とありますが、その特性を知った方に施工を依頼する事をお勧めします。

まとめ

素材には好みがありますし、万能ではありません。だからこそ、実際に見たり手に触れたりしてこれからずっと付き合っていくお家の大切な要素の一つ、外壁を感じて決めて作っていきましょう。

そとん壁 かき落とし仕上げ

そとん壁 かき落とし仕上げ W-129

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