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縁側の理想の高さとは?暮らしを変える「段差」設計の極意とアイデア

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庭に面した縁側で、風を感じながらのんびり過ごす——そんな穏やかな時間に、心惹かれたことはありませんか?

実際に家づくりを考え始めると、「縁側ってどれくらいの高さがちょうどいいの?」「段差は安全なの?」といった疑問が浮かんでくるものです。
最近では、住宅の基準が変わり、縁側の高さもそれに合わせて工夫する必要が出てきています。特に長期優良住宅では床の高さが地面から約590mmとなることが多く、従来のような低い縁側とは異なる設計が求められます。

この記事では、そんな現代の住宅事情に合わせて、縁側の高さがもたらす快適性・安全性・デザイン性・メンテナンス性などを幅広く解説しています。実際の事例や住まい方に合わせた調整方法も紹介しており、初めてでも安心して考えられる内容になっています。

暮らしに寄り添う縁側の高さを丁寧に考えることで、住まいに心地よさと美しさ、そして日々の楽しみが加わります

もしあなたが「縁側をつくりたい」「今ある段差を活かしたい」と思っているなら、この記事がそのヒントになるはずです。

この記事で得られる5つの答え

縁側の高さは暮らしやすさに直結する:座る・立つ・庭に出るといった動作のしやすさが、高さによって大きく変わることが分かります。

住宅基準により高さが変化している:長期優良住宅など現代基準では、従来よりも高い床面設計が主流となっていることを理解できます。

段差は工夫次第で魅力に変えられる:「段差=障害」ではなく、「段差=空間の個性」として活かす設計手法が紹介されています。

家族構成や地域性に合わせて設計すべき:高齢者や子ども、雪国や都市部など、住まい方や敷地条件に応じた最適な高さ調整の考え方が示されています。

高さによって視線や空間の印象が変わる:縁側の高さは、屋内外のつながり方や視界の抜け方を左右し、暮らしに癒しや奥行きをもたらす重要な要素であることが理解できます。

1. 縁側の基本知識

1-1. 縁側とは何か?屋内外をつなぐ日本の伝統空間

縁側とは、日本の伝統的な住宅において、屋内と屋外を緩やかにつなぐ中間的な空間のことを指します。通常、家の縁に沿って設けられ、床が張られた細長い通路のような形状をしています。縁側は内部空間の延長でありながら、庭と一体となった開放的な雰囲気を持ち、住まいの中に自然との接点を生み出します。

縁側は単なる通路ではなく、季節の移ろいや自然の光、風を楽しむためのスペースとしても利用されてきました。家族が団らんをしたり、お茶を楽しんだり、時には来客を迎えたりするなど、多目的に使われる場所です。特に夏場には、夕涼みをする場としての役割も果たしてきました。

このように、縁側は日本の風土や暮らし方に根ざした空間であり、単なる建築要素ではなく、生活文化そのものの一部でもあります。建物内部と外部の環境をつなげることで、住まいの中に「ゆとり」や「余白」をもたらしてくれる存在なのです。

また、縁側は雨の日でも外の景色を楽しめる場としても重宝されます。屋根のひさしがかかっていることが多く、ちょっとした雨除けにもなります。現代の住宅では、この縁側的空間を「デッキ」や「サンルーム」といった形でアレンジして取り入れる例も増えています。

現代において縁側の重要性は再評価されつつあり、「内と外のつながりを大切にした住まいづくり」への関心が高まる中で、その設計や設置方法についても多様化が進んでいます。縁側は今もなお、人と自然、暮らしと風景を結ぶ架け橋として、豊かな住空間を形作っています。

1-2. 縁側の役割と機能:日差し・風・人の流れ

縁側には単なる居場所以上の機能が備わっています。まず挙げられるのは、日差しや風をコントロールする役割です。ひさしのある縁側は、強い日差しを和らげ、室内に柔らかな自然光を届けてくれます。これは夏の太陽が高い位置にあることで、ひさしが直射日光を遮り、拡散された穏やかな光だけが室内に届くからです。また、反射光によって明るさを確保しつつも、まぶしさを防ぎ、快適な空間を実現します。

また、風通しの良い縁側は、家全体の通風性を高める効果があります。建物の両側に縁側や開口部を設けることで、自然な風の流れが生まれ、夏の暑さをやわらげるとともに、湿気を逃がす機能も果たします。日本の高温多湿な気候においては、この風通しの良さが非常に重要です。

人の動線としての役割も縁側の大きな特徴です。室内を通らずに庭から直接アクセスできることで、外での作業や来客時の対応がスムーズになります。とくに農村部では、縁側が日常的な出入り口として機能しており、生活動線の中心になることもあります。

加えて、縁側は家族や近隣とのコミュニケーションの場としても活躍します。近所の人が立ち寄ったり、子どもが庭で遊ぶ様子を見守ったりと、外部との接点としての役割も大きいです。家の中にいながら外の世界とつながるこの空間は、安心感と交流の場を提供してくれます。

さらに、縁側には心理的な境界を和らげる効果もあります。内と外、私と公、静と動といった対立的な関係を和らげる「中間領域」としての存在は、日本建築の繊細な感性を象徴しています。縁側があることで、暮らしがより柔らかく、豊かに感じられるのです。

1-3. 縁側がもたらす生活の豊かさ

縁側は生活の中に“ゆとり”と“気配”をもたらす装置です。例えば、家族が集うリビングと庭をつなぐ場として、子どもが遊び、大人が見守る。あるいは、ひとりでぼんやりと外を眺める時間をつくるなど、縁側があるだけで日常に「余白」が生まれます。この余白は、現代の忙しい生活において、極めて貴重な心の安定をもたらす要素と言えるでしょう。

また、縁側は季節の変化を自然に受け止める装置でもあります。春には芽吹きを、夏には蝉の声を、秋には落ち葉を、冬には凛とした空気を。四季折々の変化を縁側を通して感じられることは、都市部で暮らす私たちにとっても自然とつながる貴重な時間です。

人の動きにも縁側は深く関わります。屋外から帰ってきた人が縁側で一息ついたり、ちょっと腰掛けて靴を履いたり、訪問者とのさりげない会話が生まれたりする。日常の中に滞在や交流の「間(ま)」をつくる縁側は、人の暮らしをなめらかにし、人間関係をやわらかくつなぐ役割も担っています。

また、家の外観としての縁側の存在感も大きいです。板張りや天然木の仕上げがもたらす質感は、建物全体の印象をやさしく見せる効果があります。庭と建物の間にリズムを与え、外構デザインの調和を高める役割も果たします。植栽とともにある縁側は、まさに風景をつくる建築要素と言えるでしょう。

こうして見ていくと、縁側は単なるスペースではなく、「暮らしの質」を引き上げる機能的かつ情緒的な場所であることがわかります。設計段階で縁側の位置や大きさ、高さ、素材などを丁寧に検討することで、住まいの価値は何倍にも高まります。

1-4. 和風住宅における縁側のデザイン的意義

和風住宅において縁側は、単なる機能部材ではなく、建築全体の佇まいを左右する重要な要素です。外観においては、縁側の存在が建物に水平ラインの落ち着きを与え、屋根の出と連動して陰影をつくり出します。これにより、建物に奥行きと風格が生まれ、庭との調和も格段に高まります。

室内から見た縁側もまた、「風景のフレーム」として働きます。庭を眺める際、縁側の床・柱・軒が視界を切り取り、まるで絵画のような構図を生み出します。これは日本建築特有の美意識であり、自然を“借景”として取り込むことで、室内空間に詩的な広がりを与える工夫でもあります。

縁側のデザインは建物全体の「間取りのリズム」にも影響します。例えば、南面に長く取られた縁側は、室内の連続性を高め、風通しや視線の抜けを生み出します。あるいは東面に配置すれば朝日が差し込み、爽やかな一日の始まりを演出することもできます。

また、縁側には伝統的な素材や意匠が自然と合います。天然木の板張り、面皮柱、漆喰の壁など、和の要素が縁側の静けさと品格を高めます。こうした素材が生む風合いは、経年とともに味わいを深め、時を重ねるほどに美しさを増すのが特徴です。

現代の設計では和風住宅であっても断熱や耐久性への配慮が求められるため、純粋な昔ながらの縁側は少なくなっていますが、意匠として縁側を取り入れることで、機能性と美しさの両立は十分可能です。窓の外にデッキを設けるだけでも、縁側的な役割は果たせます。

1-5. 現代住宅における縁側の再評価と可能性

近年、縁側は現代住宅において再び注目されています。それは単なる「懐かしさ」や「和風の趣」という理由だけではありません。テレワークや在宅時間の増加、自然とのつながりを重視するライフスタイルの変化により、「内と外の間」で過ごせる場所へのニーズが高まっているからです。

たとえば、現代の縁側はワークスペースや読書コーナー、子どもの遊び場として使われることもあります。このように多用途に使える場所としての柔軟性は、従来の廊下やデッキにはない魅力です。室内の延長でありながら、庭や外部の自然に触れられる縁側は、新しいライフスタイルにふさわしい空間と言えるでしょう。

また、断熱性能や耐候性を確保しつつ縁側の意匠を活かす設計も可能です。たとえば、高性能な窓や引戸を採用し、室内と同じ仕上げの床を縁側に続けることで、冬でも寒くない縁側空間が実現できます。こうした工夫により、縁側は「外に開かれた室内空間」として一年を通して活躍します。

住宅の中で縁側が果たす役割は、「つなぐ空間」であると同時に、「たまる空間」でもあります。家族が自然と集まり、会話が生まれる縁側。庭の景色を取り込み、時間の流れを感じる場所。忙しい現代人にこそ、この「静けさと広がり」をもたらす縁側の価値は大きいといえるでしょう。

今後の住まいづくりにおいて、縁側という空間をどのように取り入れるかは、その家の個性や住まい手の価値観を反映する設計テーマになっていきます。単なる伝統の継承ではなく、新しい暮らしに即した「縁側のかたち」を模索することが、これからの住宅設計において重要になるのではないでしょうか。

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2. 適切な縁側の高さとは

2-1. 縁側の標準的な高さ:地面からの寸法目安

縁側の高さを決める際、まず参考にされるのが地面から床面までの寸法です。日本の伝統的な住宅では、縁側の床高さはおおよそ30~40センチ程度に設計されることが多く、これは靴を脱いで上がる日本の文化における「座る・立つ」の動作を自然に行える高さとして最適とされてきました。この高さは、畳や床に直接座って外の景色を楽しむ際にも、腰をかけやすい位置となり、腰かけたまま庭を眺めたり、作業をしたりするのに適度な視点が得られるのです。また、高すぎず低すぎずバランスが良いため、子どもから高齢者まで幅広い年代で使いやすい高さでもあります。

一方で、現代住宅では長期優良住宅の認定基準などにより、建物の基礎高は地盤面から400mm以上が標準とされています。そのため、室内の床面は地面からおおよそ590mm程度の高さになることが一般的です。これに伴い、縁側も室内とフラットな高さに設けられることが多く、従来よりも高い位置に配置される傾向にあります。

室内とフラットに続く縁側は、動線の連続性や視線の抜けに優れ、リビングや和室から庭へのつながりを自然に演出します。しかし、地面から60cm近くの段差があるため、外からの昇降には十分な配慮が必要です。踏み台やステップなどを設け、安全性を確保する工夫が不可欠です。

また、地域ごとの特性によっても縁側の適切な高さは変わります。積雪地域では雪対策として床を高く設けることが多く、反対に都市部では道路との高低差や敷地条件を考慮し、アプローチの工夫が求められます。

結論として、伝統的な30〜40cmの高さが縁側本来の心地よさを生む基準である一方で、現代の基準に合わせた高さ設計(590mm前後)も必要です。どちらを選ぶにしても、使用目的や安全性を考慮し、段差の処理や動線の工夫を加えることが重要です。

 

2-2. 座りやすさと昇降のしやすさ:使いやすさの基準

座ったときに足が床面にしっかりつくかどうかは、とても重要な感覚的指標です。例えば、段差が低すぎると立ち上がりがしづらく、高すぎると足を上げるのが負担になります。一般的には、座ったときの膝の角度が90度程度になるような高さ(おおよそ30〜40cm)が「ちょうど良い高さ」とされています。

昇降しやすい高さを探る際に、試し座りは非常に効果的です。実際に板に腰掛けてみて、座った状態から立ち上がる、あるいは逆に腰を下ろす動作を試すことで、その高さが自分に合っているか感覚的に確かめられます。設計段階でこの試し座りを行うことで、使用時のストレスを事前に軽減できます。

また、昇降のしやすさには踏み台やステップの有無も大きく影響します。足元に安定した補助があることで、段差が60cm前後の場合でも無理なく昇り降りが可能になります。段差がある縁側では必ず検討すべき要素です。

さらに、縁側の幅も座り心地や昇降の安定性に影響します。幅が狭すぎると足を床に置いたときに窮屈さを感じるため、実用的には40~60cm程度の幅があると、座る・立つ・歩くといった動作が自然に行いやすくなります。

最後に、縁側は安全面への配慮が常に求められます。例えば、夜間や小さな子どもが使用する場面では、足元灯を設ける、滑り止めを施す、踏み面の角を丸くするなどの工夫が重要です。また、濡れ縁であれば雨天時の滑りやすさも考慮して、滑りにくい素材や仕上げを選ぶことが望まれます。

2-3. 子どもや高齢者に配慮した高さの工夫

縁側は世代を問わず使われる空間だからこそ、子どもや高齢者にも優しい設計が求められます。特に高さに関しては、身体的な負担をできる限り軽減する工夫が重要です。小さな子どもにとっては昇り降りがしやすく、かつ落下しても安全な高さに配慮する必要があります。

高齢者の場合は、関節の可動域や筋力の衰えを考慮して、無理のない動作で利用できるようにすることが重要です。例えば、腰をかけた時に膝が直角に曲がる高さは理想的とされ、一般的には地面から35〜45センチ程度が目安とされています。この範囲であれば、立ち上がる際にも力をかけやすく、安全です。

しかしながら、現代の住宅基準に基づいた床面の高さ(約590mm)では、このような配慮だけでは不十分です。そのため、昇降用の踏み台や段差を複数に分けたステップの設置が効果的です。段差を一気に乗り越えるのではなく、小分けにすることで安全性が向上します。

また、段差だけでなく「握る・つかまる」動作への配慮も忘れてはなりません。縁側の一部に手すりを設けることで、昇降時や立ち座りの際に身体を安定させることができ、安心感が生まれます。特に夜間や雨天時には、ちょっとした補助が事故を防ぐ大きな要素になります。

子どもや高齢者が安心して縁側を使えることは、家族全体の暮らしやすさにもつながります。世代を超えて縁側で過ごす時間が増えれば、自然と家族の交流も深まります。だからこそ、高さに対する細やかな配慮は単なる安全対策ではなく、家庭の豊かさを育む設計上の大切な要素と言えるでしょう。

2-4. 縁側を安全に使うために知っておきたい法律のこと

縁側を安全に、そして将来的にも使いやすい空間にするためには、関連する法律や制度の考え方を理解しておくことが大切です。特に高齢者や子どもと一緒に暮らす家庭では、段差や昇降の安全性に対する配慮が求められます。こうした配慮は、必ずしもすべて法律で義務化されているわけではありませんが、快適な暮らしのために非常に有益です。

建築基準法では、縁側に関して特別な高さ制限や手すりの設置義務は明確に定められていません。また、バルコニーや吹き抜けなどの高所に関しても、原則として一般住宅(4号建築物)には建築基準法上の規定が適用されないため、手すりの設置も法的には義務ではありません。つまり、安全性の確保は設計者や建て主の判断に委ねられており、推奨事項として自主的に取り入れることが望ましいという位置付けになります。

一方で、高齢者や障害者に配慮した住宅づくりの指針として、「バリアフリー法(高齢者等配慮住宅設計指針)」があります。これは法的拘束力こそありませんが、住宅の新築・改修時に参考とされることが多く、手すりの設置段差の解消滑りにくい床材の採用などが推奨されています。縁側においても、これらの視点を取り入れることで、誰もが使いやすい空間となります。

近年では、自治体によっては「住宅改修補助制度」などを通じて、手すり設置や段差解消工事に対する助成金が用意されているケースもあります。縁側を介護や見守りの視点で活用したい場合には、これらの制度を活用することも選択肢の一つです。設計段階から将来を見据えた対応を検討することで、コストと安心の両立が図れます。

法律や制度を知っておくことで、縁側はより使いやすく、安全な空間に進化します。法的な「義務」がなくても、実際の暮らしに即した「配慮」を取り入れることが、家族みんなにとっての安心や快適さにつながります。設計者や施工者としっかり相談しながら、安心して長く使える縁側を目指しましょう。

2-5. 縁側の高さ調整と段差解消のアイデア

現代の住宅においては、縁側の床面が地面から約590mm程度の高さに設計されることが一般的ですが、この高さは庭との間に大きな段差を生む要因になります。こうした段差を放置すると、使いづらさや転倒リスクの原因になりかねません。そこで、縁側の高さを調整しながら、安全かつ快適に使うためのアイデアが求められます。

最も基本的な方法は、段差を緩やかにするためのステップ(段)を複数設けることです。たとえば、2段または3段に分けて高さを解消することで、一段あたりの高さを20〜25cm前後に抑え、昇降の負担を軽減します。素材には木製、コンクリート製、石材などがあり、住宅のデザインや用途に合わせて選ぶことができます。

次に、庭側の地盤を上げる方法もあります。縁側の床に合わせて庭部分の高さをかさ上げすることで、段差そのものを小さくすることができます。透水性のある砂利敷きや芝生などを用いて自然に地盤を高く仕上げることで、景観を損なわずに段差を解消できます。

また、可動式の踏み台やベンチ型ステップを活用するのも実用的な方法です。特に高齢者のいる家庭では、昇降のしやすさを調整できる可動式の踏み台は非常に便利です。設置場所を移動できるため、必要な時だけ使用する柔軟な運用が可能ですし、掃除やメンテナンスもしやすくなります。

最後に、段差部分に視認性の高いデザインを取り入れることも、安全性を高めるために有効です。たとえば段差があることを認識しやすいように、縁の部分に素材や色でさりげなく変化をつける工夫があります。ただし、こうした工夫は慎重に行う必要があります。強いコントラストや人工的な装飾は、縁側のもつ静けさや佇まいを損ねてしまう可能性があるためです。そのため、自然素材や周囲の色調に調和した控えめな表現で視認性を確保することが理想的です。また、夜間は足元灯やソーラーライトを必要な場所だけに絞って設置し、やさしい明かりで安全性を確保する工夫が求められます。

3. デザインと実用性のバランス

3-1. 景観を活かす高さと庭とのつながり

縁側の魅力は、室内と庭のあいだに生まれる優しい“つながり”にあります。そのため、縁側の床高さは視線(目線)の角度を左右し、景観の見え方に大きく影響します。低めに設置すると地面近くの植物や石などが目に入りやすく、繊細な庭の要素が自然に視界に入ります。

一方、高めに設置された縁側は庭全体を俯瞰する視点を提供し、庭の構図や奥行きを感じやすくなります。このような視線の違いは、まるで風景が絵画のように切り取られ、自宅にいながら“外の美”を鑑賞する趣の変化を楽しむことができます。

縁側の高さは、庭へのアクセス感にも影響します。低めの高さは足を伸ばしてそのまま庭に降りられるような親しさを生み出し、高めは縁側から一歩を踏み出す“儀礼的”な構えをもたせます。家と庭がどうつながっていてほしいかを考えながら高さを検討することが大切です。

また、季節ごとの庭の変化を縁側からどう楽しむかも、床高さの設計ポイントになります。低めは葉や芝、花などの細部を感じやすく、高めは全体の調和や樹木のシルエットなど、違った視点から庭の魅力を堪能できます。季節の移ろいが織りなす見え方の変化を意識した設計が好まれます。

最後に、縁側から庭への視線は連続性があるほど心地よく感じられます。床高さだけでなく、庭との素材のつながりや縁側の奥行き・幅、手すりや縁枠の存在感など、全体のバランスが整ったとき、縁側は美しく、機能的な景観の一部となります。

3-2. 階段・ステップの設置方法

縁側に階段やステップを設ける際には、「安全性」と「景観への馴染み」が両立する設計が求められます。特に現代の住宅では縁側の床が地面から約590mm前後になることが多く、この高さを緩やかに解消するステップは不可欠です。段の高さは15〜18cm程度が目安とされており、昇り降りがしやすく、転倒のリスクも軽減されます。

ステップの幅は、足元がしっかり安定するように60cm程度を基本に設計すると良いでしょう。また、縁側と同じ素材(木材など)を使用することで、一体感のある外観が得られます。塗装や加工で滑りにくくすることで、雨天時でも安心して使用できます。

設置する位置にも工夫が必要です。たとえば、縁側の中央にステップを配置すれば動線が直線的になり使いやすくなりますし、端に配置すれば縁側の見た目がすっきりと整い、庭全体の印象が引き締まります。

使用する素材によっても印象が変わります。木材は柔らかな印象と温かみがあり、自然との調和が図りやすい一方で、定期的なメンテナンスが必要です。石材やタイルなどは耐久性に優れていますが、冷たく硬い印象になるため、住まい全体の雰囲気とのバランスを考慮しましょう。

また、夜間の使用も視野に入れて足元灯を設置することで、安全性が大きく向上します。光の色や明るさを調整し、柔らかな照明で縁側の落ち着いた雰囲気を損なわないようにすることがポイントです。必要最小限の明かりで十分な視認性を確保することで、安心して利用できる空間になります。

3-3. 境界を美しく整える縁側の高さ設計

縁側の「高さ」は、単なる構造的な寸法以上に、屋内と屋外の境界をどう美しく、心地よく切り取るかという重要な設計要素です。縁側の高さによって生まれる段差や視点の違いは、空間の性格を決定づけ、見る者・使う者に対して明確なメッセージを与えます。

たとえば、室内と庭を段差なく連続させるような低めの縁側は、開放感と親しみを生み出します。足を伸ばして庭へ出られる気軽さは、家族や来客との距離も縮め、暮らしに柔らかな一体感をもたらします。逆に、高さをしっかり設けた縁側は、屋内と屋外を分ける明確な境界線となり、縁側そのものに「間(ま)」としての役割を与えます。

このような高さによる境界設定は、視線の抜け方や自然光の取り込み方にも影響を与えます。高さを持たせた縁側は、目線を庭全体へと誘導し、遠近感を感じさせる「間取りの奥行き」を演出するのに効果的です。逆に低く抑えることで、緑の足元や苔、地表の湿気など、繊細な景色を味わうことができます。

また、境界としての機能だけでなく、防犯やプライバシー面でも高さは重要な役割を果たします。高さのある縁側は道路や隣家からの視線を程よく遮り、外部からの侵入も抑制する視覚的・心理的な効果を持ちます。一方、完全な壁で仕切らず、空間の“あいまいさ”を残すことで、自然との調和が保たれるのも日本家屋ならではの美しさです。

最終的には、縁側を通じて「どう暮らしたいか」「どんな景色と過ごしたいか」という住まい手の意図が、境界のあり方を決定します。高さはその調整装置であり、建築的な線引きを超えて、心のゆとりや美意識を形にするためのデザイン要素です。機能だけでなく、情緒や景観までをも考慮した“高さ設計”が、真に美しい縁側をつくり出します。

3-4. 縁側の高さによる視線の工夫とプライバシー

縁側の設計において「視線のコントロール」は、快適な住環境づくりにおいて見逃せない要素です。特に縁側の“高さ”は、視線の抜けや遮り方に大きく影響を与えます。これにより、庭からの見え方だけでなく、室内からの眺望、さらには通行人や隣家からの視線にも配慮した設計が求められます。

たとえば、縁側を地面から高めに設けることで、歩行者や外部の視線を自然に遮る効果が得られます。このような設計は道路沿いの敷地や、隣家との距離が近い都市型住宅において有効です。直接的な遮蔽物を設けずとも、床高さそのものが視線の高さを変え、穏やかにプライバシーを確保してくれます。

一方で、低めに設定した縁側は、庭とのつながりが密になる反面、周囲からの視線が届きやすくなります。その場合、植栽や格子、パーゴラなどを活用して、視線を柔らかく遮る「間接的な目隠し」が効果的です。視線を完全に遮らないことで閉塞感を回避しながら、心地よい囲まれ感を演出できます。

また、視線のコントロールは「視覚的な広がり」にも関係します。視線が遠くまで抜けるように設計された縁側は、実際の面積以上の開放感をもたらします。ここで高さの調整がうまくなされていれば、わずかな植栽や塀の配置によって、視線を巧みにコントロールすることができ、空間の質が大きく向上します。

縁側は、住まいの中で唯一「外」との接点を持つ中間領域です。そのため、外部からの視線に対しては敏感であるべきであり、同時に自らの視線をどう外へ向けるかにも工夫が必要です。高さを調整することで、視線の“通し方”と“遮り方”のバランスを取り、静かで落ち着きのある空間を実現できます。

3-5. 段差を魅せる設計:縁側の高さと暮らしを変える工夫

長期優良住宅では、地盤面から床面までの高さを400mm以上確保する必要があります。結果として、縁側の高さも相応に高くなりますが、この段差を活かすことで、機能的かつ美しい縁側空間を実現している事例が増えています。段差を単なる「昇り降りのためのもの」ではなく、「佇まいの一部」として設計することで、空間の魅力が高まるのです。

ある住宅では、床の高さに生まれる段差を2段構成のステップで柔らかくつなぎ、縁側の端に腰掛けスペースとして活用できる設計が施されています。中段は庭への動線としてだけでなく、縁側での滞在時間を豊かにする「座の場所」としても機能しています。段差があるからこそ生まれる“たまり”の空間です。

別の事例では、盛土によって庭側の地盤を調整し、縁側との段差を緩やかに見せています。この手法により段差の印象を和らげつつ、雨水の跳ね返りを抑制し、縁側の劣化防止にも役立っています。高さを調整するのではなく、視覚的に「段差を感じさせない」工夫がポイントです。

こうした工夫に共通しているのは、「段差=障害」と考えるのではなく、「段差=空間の変化」として捉える姿勢です。縁側の高さが生み出す段差は、使い方と見せ方を工夫することで、暮らしに新たな価値と魅力をもたらす要素へと変わっていきます。設計の視点ひとつで、段差が日常を豊かに彩る装置になるのです。

まとめ

本記事ではまず、縁側とは何か、その根本的な意義から話を始めました。縁側は単に「建築的な付加部分」ではなく、日本の住まいにおいて内外の境界をつなぐ象徴的空間であることを再確認しました。濡れ縁・くれ縁・内縁という種類ごとの違いを整理しながら、縁側が持つ「開放性」「居心地」「家族や自然との接点」という多重的な価値を掘り下げました。伝統的な木材構法と新しい素材の使い分け、そして和風モダンな外観とのマッチングまで、多様な実装手法が存在することも紹介しました。

続いて、現代住宅の基盤である「長期優良住宅基準による地盤面からの400mm以上」という前提から、縁側の高さに焦点を当てて検討しました。従来の30~40cm設計がいかに機能的・心理的に優れていたかを認識しつつ、新基準によって床高が590mm前後となる現状に対して、どう段差を緩和し、安全性と利便性を両立させるかを解説しました。ステップの分割、視認性の工夫、手すりを設置しない住宅法の実情と、バリアフリー指針や自治体支援制度を取り入れる必要性も整理しました。

さらに、デザイン面と実用面のバランスから縁側空間を捉え直しました。庭との視線や動線に与える高さの影響を解説しながら、“高さを制御することで空間の味わいを深める”という設計手法を紹介しました。具体的には「高さで境界をつくる」内外の分離、プライバシー確保、視覚的奥行き演出といった機能をテーマとし、「段差を魅せる設計」として長期優良住宅における実例を交えながら構成しました。ステップの段差を座る→眺める→動くといった使い方へ変換する提案や、盛土で段差を見えなくする方法など、実践的な工夫を紹介しました。

総じて言えるのは、縁側の「高さ」は単なる施工上の制約ではなく、暮らしに新たな可能性を付与するキー要素である、ということです。地盤面と床高の間に生まれる段差は、安全性・段差緩和・視線の制御・座の快適性など、さまざまな価値に転換できます。これらを設計の初期段階から意識し、住まい手のライフステージ(子育て、高齢化)や敷地条件(都市・郊外・雪国)に応じた最適な構成を考えることが、豊かな縁側づくりにつながります。

まずは、ご自身の住宅の地盤高や基礎高さを確認し、縁側にどの程度の段差があるかを把握することが大切です。そこから、「ステップは何段が理想か」「視認性に配慮すべきか」「座ってくつろげる“たまり”をどう設けるか」「自治体の補助制度が活用できるか」など、具体的な設計の方向性を検討していくことが重要です。高さを意識して設計された縁側は、見た目・使いやすさ・安全性・情緒のすべてを兼ね備えた、住まいの顔としての役割を果たしてくれるでしょう。

このまとめが、縁側づくりを検討されている皆さまの一助となれば幸いです。伝統とモダンの融合、暮らしやすさと情緒の両立など、これまで紹介した工夫をぜひご自身の設計やリフォームに取り入れてみてください。

 

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