田辺市で心地よい木の家を建てる・なおす 新築・リフォーム・リノベーション

登録はメールアドレスのみ!メールマガジン配信しています!

耐震性と長寿命住宅を実現する鍵|構造用合板の基礎知識と賢い選び方

WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -

地震に強い家を建てたい。でも、どんな素材を選べば安心できるのか分からない…

そんな不安を抱えている方は、実は多いのです。特に家族を守る住まいとなれば、構造材の選択は重要です。現代の住宅において、耐震性や耐久性、省エネ性を高めるためには、壁や床に使われる「構造用合板」の理解が欠かせません。
しかし、見た目は似ていても、一般合板と構造用合板では性能に大きな差があり、間違った選定や特に施工は住宅の信頼性を損ねる要因になります。

そこで本記事では、建築士や専門工務店が実際に採用している構造用合板の特徴・種類・JAS規格・性能評価制度との関係性を徹底解説
さらに、長期優良住宅制度や性能表示制度との関わり、最新の法規制や未来展望までを網羅的に解説しています。

この記事を読むだけで、「耐震性に優れ、長く安心して暮らせる家」を建てるための構造用合板選びの知識が身につきます。

地震に備えた住まいづくりを真剣に考えるあなたにとって、この記事は必ず役立つ内容です。
見えない部分こそ、住宅の価値を左右する。構造用合板の正しい知識と選定が、あなたと家族の暮らしを根底から支える力となるでしょう。

この記事で得られる5つの答え

構造用合板の重要性と活用方法について深く理解することで、住宅の耐震性・耐久性を確保し、長期的に安心して暮らせる家づくりが可能になります。本記事を通して、ユーザーが得られる答えは以下の5点です。

  1. 構造用合板は、住宅の耐震性・耐久性を左右する重要な構造材であり、単なる下地材ではないことが理解できる。
  2. JAS規格などの法的基準を満たした合板を選ぶことが、安全で信頼性の高い住宅づくりに直結する。
  3. 耐震等級や長期優良住宅制度、性能表示制度との関係を正しく理解することで、制度対応の家づくりが可能になる。
  4. 壁・床・屋根などの部位ごとに適切な選定と施工を行うことが住宅性能を左右する。
  5. 専門家との連携により、コストと性能のバランスを取りながら最適な設計・施工が可能になることを学べる。

1. 構造用合板の基礎知識

1-1. 構造用合板とは何か?

構造用合板とは、建築物の構造体に使用される合板の一種であり、特に耐久性や強度が求められる部位に用いられる材料です。木材を薄くスライスした単板(ベニヤ)を、繊維方向を直交させながら接着・圧着することで、反りや割れに強くなり、全体の安定性を高める役割を果たします。

この合板は、壁や床、屋根など建物の主要な構造部分に取り付けられるため、「構造用」という名称が付きます。特に木造住宅では、地震や風などの外力に耐えるために重要な役割を担っており、設計の初期段階からその使用を前提とした計画が行われます。

一般的な合板とは異なり、構造用合板はJAS(日本農林規格)に基づく厳しい品質基準を満たす必要があります。そのため、強度、寸法安定性、接着性能など多くの項目で規格化されており、安全性を確保した建築を実現することが可能になります。

また、構造用合板は設計者や施工者にとって扱いやすく、コストパフォーマンスも高いため、戸建て住宅から公共建築物に至るまで幅広く採用されています。リフォームや耐震補強の場面でも、その使い勝手の良さから重宝されています

総じて、構造用合板は現代の建築において「安全性」と「効率性」を両立するために欠かせない素材であり、住宅性能を高めるための基本材料の一つとして位置付けられています。

1-2. 構造用合板の主な種類と特徴

構造用合板にはいくつかの種類があり、それぞれ用途や性能に応じて使い分けられます。代表的なものとして、「針葉樹合板」「広葉樹合板」「OSB(配向性ストランドボード)」「構造用パーティクルボード」などがあります。これらはすべて、構造耐力上必要な強度や剛性を持つ材料として認められています。

「針葉樹合板」は、日本の住宅建築で最も多く使用されており、スギやカラマツなどの針葉樹を原料にしたものです。強度が高く、加工性も良いため、壁・床・屋根など幅広い用途に使われています。

「OSB」は、木材の小片を方向性を持たせて配置・接着したパネルで、均一な強度と安定した品質が特徴です。北米では非常にポピュラーな材料であり、日本でも徐々に普及が進んでいます。

「構造用パーティクルボード」は、木材チップを接着剤とともに圧縮成形したもので、コストパフォーマンスに優れています。ノボパン製品などでは、用途に応じた耐水性の区分が設けられており、「普通(U)」「耐水1(M)」「耐水2(P)」の3種類が存在します。たとえば、耐水1は床や屋根下地に、耐水2は耐力壁に使用されることが一般的です。使用箇所に応じて適切な選定が重要です。

このように、構造用パーティクルボードをはじめとする各種構造用合板には、それぞれの特性に応じた使い分けが求められます。耐水性の区分など、製品の性能を正確に把握することは、使用箇所に最適な材料を選定する上で不可欠です。建物の性能を最大限に引き出すためには、設計段階からこれらの情報を踏まえて材料選定を行うことが重要となります。

1-3. 一般的な合板との違い

構造用合板と一般的な合板との最大の違いは、「使用目的」と「求められる性能」にあります。構造用合板は、建物の強度や耐震性を高めるための構造材として使われるのに対し、一般的な合板は主に内装や家具などの非構造用途に使用されます。

構造用合板は、JAS規格で定められた強度、耐久性、接着性能など厳しい基準をクリアしており、品質試験の結果が表示されている点が特徴です。一方、一般合板にはそうした表示義務がないため、同じように見える板材でも性能に大きな差がある可能性があります。

また、構造用合板は通常、耐力壁や床構面などの応力を受ける部位に使用されるため、釘やビスの保持力が重要視されます。これに対して、一般合板は見た目の美しさや加工性が重視される傾向にあり、接着剤や表面仕上げも異なる場合が多いです。

構造用合板は耐水性にも優れており雨や湿気の多い環境でも変形しにくい設計になっています。一方、一般合板は湿度の影響を受けやすく、特に水廻りで使用する場合には注意が必要です。

このように、構造用合板は「構造体の一部としての責任」を持つため、設計段階での正しい選定と現場での適切な施工が求められます。建築の安全性を確保するためには、合板の種類を見極め、使用目的に合った製品を選ぶことが不可欠です。

1-4. 使用される素材と製造方法

構造用合板は、複数の木材を積層して作られることにより、高い強度と安定性を実現しています。基本的には、木材を薄くスライスした単板(ベニヤ)を繊維方向が互いに直交するように重ね、接着剤を用いて圧着していきます。この構造により、木材特有の伸縮や反りを抑え、均質な性能を持たせることが可能となります。

使用される素材には、スギやカラマツ、ラワン、ポプラなどの針葉樹および広葉樹があり、強度やコスト、地域資源の利用状況に応じて選ばれます。たとえば、日本国内ではスギやカラマツが多用されており、国産材の活用としても注目されています。

製造工程では、まず原木をロータリーレースという機械で薄くスライスし、単板を作成します。その後、単板の乾燥、欠点の修正、接着剤の塗布といった工程を経て、複数枚を重ねて高圧プレスで圧着し、合板に成形されます。このプロセス全体で、素材の品質管理と精度の高い加工が求められます。

接着剤の種類も重要な要素であり、耐水性や耐久性に影響を与えます。構造用合板には、フェノール樹脂系接着剤など、強固な接着性能と耐候性を持つものが用いられます。これにより、屋外や湿気の多い場所でも使用可能となり、耐震設計にも適した性能を持つことができます。

最終製品は、JAS規格に基づき厚さ、寸法、強度などの検査を受け、適合したものだけが「構造用合板」として流通します。このように、原材料から製造、検査に至るまで一貫した品質管理が行われており、信頼性の高い建築資材として住宅の安全性と性能を支えています。

1-5. 日本工業規格(JAS)と品質基準

構造用合板が建築用途に安心して使われるためには、一定の品質基準を満たすことが不可欠です。その基準となっているのが、日本農林規格(JAS)です。JASは、合板の品質、寸法、強度、接着性能などを細かく規定しており、厳格な審査をクリアした製品だけが「JAS構造用合板」として認定されます。

特に重要なのは、曲げ強さ、せん断強さ、釘の引抜き抵抗などの構造的な性能です。これらは建物の耐震性や耐久性に直接関わる要素であり、建築基準法に基づく設計においても重要視されます。JAS規格はこうした物理性能の信頼性を担保するための制度です。

また、JASマークが付された構造用合板は、施工時にも識別しやすく、品質の均一性が担保されていることから、設計者や施工者の間での信頼も高いです。公共建築物や長期優良住宅など、高い性能が求められる建築物ではJAS認定品が積極的に採用されています。

JASでは合板の種類別に等級分けもされており、「特類」「一類」「二類」などの分類があります。たとえば「特類」は耐水性に優れ、屋外使用にも適したものとして位置付けられています。使用する場所や目的に応じて、これらの等級を正しく理解することが求められます。

このようにJAS規格は、構造用合板の品質を保証する信頼の証であり、適切な製品選定や安全な住宅づくりの基盤となります。住宅性能を高めるためには、JAS認定を受けた製品を積極的に採用し、その規格内容を理解した上で使用することが重要です。

2. 耐震設計における構造用合板の役割

2-1. 耐震壁としての機能と役割

構造用合板は、木造住宅の耐震性能を支える「耐力壁」として非常に重要な役割を果たしています。耐力壁とは、建物にかかる水平力、すなわち地震や強風などの外力に抵抗するための壁で、構造用合板を使用することでその性能が大きく向上します。

特に、構造用合板は「面材耐力壁」として機能します。これは、柱、梁、土台などの構造材に合板を貼ることで面としての剛性を持たせ、力を分散・吸収させる構造です。釘打ちによる接合により、力が合板全体に分散され局所的な損傷を防ぐことができます

この耐震壁の構造は、筋交いを使用する軸組工法とは異なり壁全体で力を受け止めるため、変形に強く地震の際にも粘り強く建物を支えることができます。これにより、建物の揺れを抑え、倒壊のリスクを大幅に軽減できます。

また、構造用合板は耐力壁以外にも、床や屋根の構面にも用いられ建物全体の一体性を高める効果があります。これにより、地震力が建物全体にうまく伝達され構造躯体の損傷を防ぐことができます。

このように、構造用合板は耐震設計の中核を担う素材であり、その正しい設計・施工が住宅の安全性を左右します。JAS規格に適合した合板を使用し、適切な釘の種類や間隔で施工することが、最大の性能を引き出すために欠かせません

2-2. 釘やビスによる施工のポイント

構造用合板を耐力壁として適切に機能させるためには、合板の性能だけでなく、その施工方法にも細心の注意を払う必要があります。特に釘やビスの打ち方は、壁全体の耐震性能に大きな影響を与えます。

釘の種類については、一般的にN釘(N50など)が使用されますが、構造計算に基づいて必要な強度を満たす規格の釘を選ぶことが重要です。防錆処理された釘や専用の耐震釘を使うことで、長期的な耐久性を高めることも可能です。

施工時には、釘の間隔や打ち込み深さにも注意が必要です。たとえば、釘の間隔は構造用合板の周囲では75mm、中央部では150mmが一般的な目安とされています。また、釘を深く打ちすぎると合板の力を十分に伝達できず、性能が低下するおそれがあります。

ビスを使用する場合は、木割れを防ぐために下穴を開けたり、適切なトルク管理を行ったりする必要があります。施工ミスによる緩みや浮きは、地震時の性能低下につながるため、現場での品質管理が極めて重要です。

このように、構造用合板の性能を最大限に引き出すには、設計図に基づいた正確な釘・ビスの施工が欠かせません熟練した職人の技術と、施工管理の徹底によって、初めて合板の性能が発揮され、耐震性の高い住宅が実現します。

2-3. 耐震等級との関係

耐震等級とは、住宅がどの程度の地震に耐えられるかを示す指標であり、日本では「耐震等級1」から「耐震等級3」までの3段階に分類されています。等級が上がるほど耐震性能が高く住宅の安全性や資産価値にも直結する重要な基準です。

構造用合板は、この耐震等級の評価において重要な役割を果たします。とくに「耐力壁」の性能は耐震等級を決定する大きな要素であり、構造用合板を使った面材耐力壁は、筋交いに比べて剛性と粘り強さに優れているため、より高い等級を取得しやすくなります。

耐震等級を取得するには、建築士による構造計算に基づいた設計が必要です。その際、構造用合板を使用することで、壁量の確保とバランスの取れた配置がしやすくなり、設計自由度を保ちつつ高い耐震性を実現することができます。

また、長期優良住宅認定制度においても、2022年10月の制度改正により、壁量計算による基準は耐震等級2から「耐震等級3」へと引き上げられました。これにより、構造用合板を用いた高性能な耐力壁の設計は、制度の基準を満たすためにますます重要になっています。耐震等級3は、防災拠点となる建物と同等の性能が求められる水準です。

このように、構造用合板は耐震等級を高めるための有効な手段であり、住宅の信頼性や資産価値を向上させる鍵となります。地震に強い家づくりを目指すうえで、構造用合板を適切に活用した設計は今後ますます重要性を増すでしょう。

2-4. 木造住宅における活用例

構造用合板は、現代の木造住宅において多岐にわたる部位で使用されています。特に、外周部の耐力壁として用いられることが多く地震の揺れに対して建物全体を安定させる効果があります。基礎から上部構造まで一体的な剛性を確保するための材料として重宝されています。

内部の間仕切り壁にも構造用合板を使用することで、壁全体の強度を高めるとともに、室内のレイアウト変更にも柔軟に対応できる設計が可能になります。

床構面では、根太の上に構造用合板を敷設することで、水平方向の剛性が増し、家具の転倒防止や床鳴りの抑制にも効果を発揮します。地震時には上下方向の揺れに対する対抗力も強化されるため、安全性の高い生活空間を実現できます。

屋根面でも、野地板として構造用合板を使用することで、屋根構面の一体化が図れ、風圧や地震による変形を抑えることが可能になります。これにより、屋根瓦や仕上げ材のずれ・落下を防ぐという副次的な効果も期待できます。

このように構造用合板は、木造住宅において壁・床・屋根など各部位で活用され、全体としての耐震性や居住性の向上に貢献しています。設計段階で適切な配置と施工方法を選ぶことで、コストを抑えながら性能の高い住宅を実現することが可能となります。

2-5. 劣化対策と構造用合板の耐久性

木造住宅における構造用合板は、地震や風などの外力に耐える構造的役割に加えて、長期間にわたり性能を維持するための耐久性も求められます。特に、日本のような高温多湿の気候では、湿気や結露、シロアリなどの劣化要因に十分に配慮する必要があります。

劣化対策として重要なのは、使用する構造用合板の種類とその耐水性の区分です。たとえば、「特類」や「1類」などJAS規格に基づいた合板は、接着性能や耐水性が高く外周部や床下など湿気の影響を受けやすい場所にも安心して使用できます。

また、施工段階においても耐久性を高める工夫が必要です。構造用合板の屋外側に透湿防水シートを施工することで、雨水の浸入を防ぎつつ内部からの湿気を逃がすことができ、部材の劣化を抑える効果があります。さらに、通気層を確保する通気工法を採用することで、構造材の乾燥を促し、長期的な劣化を抑制することが可能です。

シロアリ対策としては、土台や柱だけでなく、構造用合板にも防蟻処理を施すことが推奨されます。しかし、モイスやタイガーEXハイパーなど一部の構造用面材は無機質素材を主成分とするため、シロアリ被害を受けにくく、防蟻処理を必要としないケースもあります。用途や使用環境に応じて適切な面材を選定することが重要です。

このように、構造用合板の耐久性を高めるためには、材料の選定だけでなく、設計・施工・維持管理の各段階で適切な対応を行うことが重要です。長く安心して暮らせる住まいを実現するためには、目に見えない部分への配慮こそが住宅性能を左右します。

3. 構造用合板と建築制度・法規

3-1. 建築基準法における構造用合板の定義と位置づけ

建築基準法において「構造用合板」は、建築物の構造耐力上、重要な役割を果たす部材として明確に位置づけられています。特に壁や床、屋根などの水平・垂直面に用いられ、建物に加わる外力を効果的に分散・支持するための材料とされています。これにより、建物の耐震性や耐風性を確保する上で欠かせない存在となっています。

建築基準法施行令第37条や告示等により、構造用合板は「面材」として明記されており、耐力壁の構成材料として使用する際には、その厚さ、釘の種類・間隔、面材の性能などが細かく規定されています。これらの規定により、構造体の強度と安定性が確保されるよう、設計および施工の段階での適切な管理が求められます。

特に耐力壁に使用される場合には、「構造用合板(JAS規格)」のうち、特類または1類であることが求められることが多く、これは耐水性や接着性能、曲げ強さなどの性能が一定基準を満たしていることを保証するものです。こうした規格に適合した製品のみが、設計上の信頼性を持って取り扱うことができます。

また、構造用合板を使用することで、壁倍率を持たせることが可能となります。例えば、構造用合板の厚みや釘の留め付け方法に応じて、2.5倍や3倍といった壁倍率が認定され、それが耐震性能の数値的な裏付けとなります。これは確認申請や性能表示制度などでも重要な指標となり、住宅の性能評価に直結します。

このように、建築基準法における構造用合板の位置づけは非常に重要であり、単なる材料選定だけでなく、設計、施工、申請、維持管理の各プロセスにおいて、その法的根拠と性能基準に基づいた判断が求められます。住宅の長寿命化や地震に強い建物づくりを支えるためにも、構造用合板の正しい理解と適切な運用が不可欠です。

3-2. 長期優良住宅制度と構造用合板の関係

長期優良住宅制度は、住宅の長寿命化と品質向上を目的として2009年に施行された制度であり、耐震性、省エネ性、維持管理のしやすさなど、複数の性能項目について一定以上の基準を満たす住宅に対して認定を行うものです。この制度においても、構造用合板は重要な構成要素として位置づけられています。

特に注目すべきは、2022年10月に行われた制度改正です。この改正により、従来は「耐震等級2または3」とされていた基準が「耐震等級3」のみへと強化されました。この変更により、住宅の構造性能に対する社会的要求が一段と高まったと言えます。耐震等級3を実現するためには、耐力壁の配置バランス、壁量、接合部の強度などに加え、使用される構造用合板の性能も厳密に選定される必要があります。

構造用合板は、耐力壁に面材として用いられることで、壁倍率を確保する手段として広く採用されています。制度上、壁倍率は設計の根幹をなす指標であり、合板の種類や厚み、釘の仕様などがその数値に大きく影響します。例えば、同じ配置の耐力壁でも、合板の厚さが9mmか12mmかによって取得できる壁倍率が異なり、結果的に構造計画全体に関わってきます

また、長期優良住宅の認定を得るには、性能評価機関による設計審査をクリアする必要があり、その過程で使用される材料の証明書や試験成績書などの提出も求められます。構造用合板がJAS認定品であることや、必要な性能を満たしているかどうかは、認定の可否を左右する要素の一つとなります。設計段階から材料選定を戦略的に行うことが重要です。

長期優良住宅制度は、単に性能を満たすだけでなく、住宅の価値向上と資産形成にも寄与する制度です。そのため、構造用合板の選定や配置といった「見えない部分」の品質が、住まいの将来的な安心感や評価に大きく影響します。耐震性と耐久性の両立を図る設計・施工において、構造用合板の適切な理解と活用は欠かせないものとなっています。

3-3. 性能表示制度と構造用合板の評価

性能表示制度は、住宅の性能を数値や等級で「見える化」する仕組みであり、消費者が住宅を選ぶ際の重要な指標となっています。耐震性、劣化対策、維持管理対策、省エネ性などが評価項目に含まれており、設計段階での性能計算や仕様選定が直接的に評価に影響を与えます。構造用合板も、こうした評価項目において重要な役割を果たしています。

とりわけ「耐震等級」において、構造用合板は耐力壁の面材としてその性能が反映されます。面材の種類、厚さ、施工方法(釘の種類や間隔)によって壁倍率が異なり建物全体の耐震等級が変わるため、選定と施工には高い精度が求められます。制度上、構造用合板のJAS認定が基本条件となるケースが多く、その品質保証も重要視されます。

また、「劣化対策等級」においても構造用合板の仕様は評価対象となります。耐久性の高い素材を用いること、適切な施工を行うこと、通気・換気などの湿気対策を講じることが求められます。具体的には、耐水性能に優れた合板を床下など湿気の多い部位に使用することが、等級の確保につながる実務的なポイントです。

また、性能表示制度の評価結果は、長期優良住宅認定においても参照されることがあり、住宅取得者にとっての安心材料となるだけでなく、税制上の優遇措置にも関係します。構造用合板の選定と施工の質は、長期的な住宅の価値や耐震性能を左右する重要な判断要素といえます。

性能表示制度における適切な評価を受けるためには、設計・施工段階で仕様を明確にし、JAS規格や告示に基づいた製品を使用することが基本です。また、建築士や設計担当者が制度の内容と構造用合板の関係を十分に理解しておくことも不可欠です。構造用合板の性能が住宅の信頼性を支える要素であることを意識し制度を活用した家づくりが求められます。

3-4. 構造用合板の今後の展望

今後の住宅建築において、構造用合板はより高性能化と多機能化が求められていくと考えられます。特に、耐震性や耐久性に加えて、防火性や断熱性などの複合性能を備えた製品の開発が進められており、それに応じた評価基準や設計手法の整備が期待されています。建築基準法や長期優良住宅制度などの法制度の進化に対応し、合板の役割も拡大していくでしょう。

また、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、木材の利用拡大が推進されており、構造用合板もその一翼を担う存在となっています。合板は再生可能な資源から作られ、製造・施工時のCO2排出量が比較的少ないため、脱炭素住宅との相性が良い材料です。今後は、ライフサイクル全体を見据えた環境評価も一層重視されるようになるでしょう。

技術面では、接着剤の改良による耐水性・耐久性の向上や、無垢材に近い質感を持つ表面仕上げの研究も進んでいます。これにより、構造用合板は「構造材」だけでなく「仕上げ材」「意匠材」としての活用も広がる可能性があります。ただし、意匠面での活用施工精度やコスト管理も含めて慎重な判断が必要です。

国産材の安定供給と利用促進も、今後の課題と展望の一つです。林業の再生や地域経済の活性化を目的に、地域産材を用いた合板の開発や、地産地消型の住宅供給体制の構築が求められています。特に、災害時の資材供給の安定性を確保するためにも、国内製造体制の強化は不可欠です。

加えて、アジアを中心とした海外市場への輸出も期待されています。日本製の構造用合板は品質管理が厳格であり、JAS認証などの信頼性が高いため、海外の建築関係者からの評価も高まりつつあります。国際的な認証制度との整合や、現地の建築事情に応じた仕様展開など、戦略的な展開が鍵となるでしょう。

3-5. 専門家による設計と協力の大切さ

構造用合板は高い性能を発揮する建材ですが、その効果を最大限に引き出すためには、建築士や構造設計者など専門家の設計と判断が欠かせません。建物全体の構造計画や力の流れを正確に把握したうえで、適切な位置に必要な性能を持つ面材を配置することが、耐震性や耐久性を確保する鍵となります。

特に壁倍率の計算釘の種類・ピッチ、合板の厚さなどの仕様選定は、制度上も精緻な設計を要する部分であり、経験と知識が必要です。これらは間違った判断をすると、建物全体の性能評価に影響する可能性があるため、施工マニュアルや告示、JAS規格の正確な理解が重要です。

また、建築士だけでなく、施工者や資材業者との情報共有も欠かせません。構造用合板の性能を活かすには、現場での正確な施工が前提となるため、図面と現場の整合性や、施工条件の確認、製品の特性の理解が必要です。現場ごとに異なる条件に柔軟に対応するための連携体制が求められます。

さらに、省エネルギー基準や長期優良住宅制度など、複数の制度にまたがる性能要件に対応するためには、各分野の専門知識を持つ技術者の連携が不可欠です。例えば、構造と断熱・気密とのバランスを取る際には、構造用合板の位置や納まりを工夫する必要があり、各担当者が協調して計画を進める体制が理想です。

このように、構造用合板を適切に活用し、安全・安心・快適な住まいを実現するためには、設計者、施工者、資材供給者が一体となってプロジェクトを進めることが求められます。個々の専門性を尊重しながら、全体として整合性の取れた住宅づくりを行うことが、今後ますます重要になっていくでしょう。

まとめ

本記事では、構造用合板の基本的な特徴から始まり、種類ごとの性能差、建築基準法における位置づけ、長期優良住宅制度や性能表示制度との関係、さらには今後の展望や専門家の関与の重要性に至るまで、広範かつ詳細に解説しました。構造用合板は、単なる下地材ではなく、住宅の耐震性・耐久性・安全性を左右する重要な構造部材です。特に地震が多い日本においては、構造計画における中心的存在として、その正しい理解と活用が不可欠です。

また、構造用合板を選定・設計・施工するうえではJAS認定などの規格への適合性や、防蟻処理、施工精度、使用部位ごとの特性など、実務的な観点からの配慮も必要です。今後は、環境対応や地域産材の活用といった新たな視点も加わり、さらに多様なニーズに応じた製品の開発や施工技術の進化が期待されます。読者の皆様には、この記事の内容を参考に、信頼性の高い住宅づくりに貢献する素材として、構造用合板の選定と活用をぜひ意識していただきたいと思います。

 

耐力壁のおすすめ 構造用面材と筋かい 耐震性と断熱性と気密性が絡みます

この記事を書いている人 - WRITER -

Copyright© 谷中幹工務店 和歌山県田辺市の工務店 , 2025 All Rights Reserved.