断熱性能より燃費性能が大切です。QPEXの活用
高断熱高気密のいう言葉を温暖な和歌山県でもよく聞かれるようになったと思いませんか?
確かに、高断熱高気密のお家は外気の影響を受けにくくなり、夏はきちんとエアコンがきいて涼しく、冬も同じく暖かい。
そんなお家はストレスもなくなり、日々の暮らしが快適になります。
しかし、その環境を維持するためにたくさんの電気代がかかっては大変。ましては昨今は電気代の値上がりの影響も大きくのしかかってきています。
これからは、一歩進んでその光熱費、建物の燃費性能まで考えてはじめて高断熱高気密のお家は生活の一部となるのです。
断熱性能ってどうして必要なの?
住まいは家族の暮らしを受け取る器です。日々の豊かに安心して暮らしていくためにはどのような器が良いのでしょう?
しっかりとした構造計算が行われた構造的に安心な家であったり
心地良い居場所が所々にある、動線が整理されたプランであったり
経年美化を感じられる触れると心地良い自然素材がそばにあったり
それから外を感じられる空間なども外せません
しかし、いくらそれらがそろった家でも夏暑かったり、冬に寒かったりするとその豊かさは一気に落ちてしまいます。
豊かに暮らすためにはしっかりとした高断熱高気密の建物で温熱的にストレスなく一年を通して快適に過ごせる事も大切なのです。
断熱性能を表す指標 Q値とUA値の違い 熱交換換気扇の取り扱い
断熱性能をあらわすものにQ値やUA値などがあります。どちらも建物の熱の逃げにくさを表すものです。以前はQ値、今現在はUA値で表記されます。
そこには大きな違いが2つあります。
まずは、1つめ。
Q値は『建物から逃げる熱量÷床面積』で求められるのに対して
UA値『建物から逃げる熱量÷外皮面積』で求めらことです
割るのが床面積と外皮面積(建物の外部に接する部分の面積、屋根や外壁、床下にあたる基礎の面積)の違いがあります。
しかし、もっと大きな違いは2つめの換気エネルギーを考慮するかどうかです。Q値では換気エネルギーを考慮しますが、UA値では換気エネルギーは考慮しましせん。
つまり、熱交換換気扇では換気によって逃げて行く熱を熱交換によって逃げにくくしますが、その働きはUA値では反映されないのです。
ちなみこのQ値やUA値。同じ性能の断熱材を屋根、壁、床などに使っても、建物の形や大きさや高さによってその数値が変わります。
つまり、カタログや施工例などで表記されている数値はあくまで参考程度、実際に建てられるのお家ではどれぐらい性能があるのかを、一棟一棟ごとに計算してもらう事をお勧めします。
いくら温熱的に暮らしやすくても光熱費が掛ったらね・・・『温熱性能の見える化』
Q値とUA値、どちらも断熱性能をあわらす数値として使う事ができます。
しかし、その断熱性能で冬の温度を20℃にした場合の電気代はどれぐらいかかるか?つまり燃費計算を行う場合は、熱交換換気扇が反映されないUA値を使う事はできません。
光熱費の検討にまで使おうとなると、Q値を使う事になります。実際に換気によるロスは発生しますので。
いくら快適な暮らしが行えても湯水の如く光熱費を使ってしまえば意味がありません。
断熱性能を生活に落し込む。つまり、どれぐらいの気温で過ごしてどれぐらいの光熱費を使うか。
『温熱性能の見える化』まで行える点でQ値は今なお有効な指標です。
温熱計算ソフトの活用 QPEX
私が温熱を学んでいる『新住協』にはQPEXなる温熱計算ソフトがあります。
このQPEXは『住宅から逃げていく熱を計算する事で、暖房、冷房にどれくらいのエネルギーが必要かを計算する事ができる優れモノです』
全国津々浦々の工務店や設計事務所でも使用されており実績のある温熱計算ソフトです。
それを活用すると一年間の暖房の光熱費も算出する事が出来ます。
つまり、『温熱性能の見える化』にもってこいの代物です。
ではQ値を使って熱がどれぐらい逃げるか検討
前述のごとくQ値とは『熱損失係数』の事をさしてます。
室内外の温度差が1℃のときに床面積1㎡あたりに逃げる熱量の事をさしており
数字が小さいほど熱の逃げにくい、断熱性能に優れた家となります。
例えばQ値が2.7(和歌山県田辺市での次世代省エネ基準2018年現在)
床面積が120㎡
室内外温度差が20℃(室内側が20℃、室外側すなわち屋外が0℃)の場合
計算式は下記の通りに
Q値×床面積×室内外温度差
2.7 ×120 ×20 =6,480W
6.48KWの熱が逃げていく事となり、室内温度を20℃に保つためには
6.48KWの熱が必要になってきます。
太陽って素晴らしい。日射の活用
実は6.48KWの熱の供給はまるまる暖房器具に頼る必要はないのです。
お家のなか(室内)住まわれている人がいて、家電などがあり、また太陽も
お家を暖めてくれます。
これらは室内発生熱 日射取得熱の呼ばれこれらを活用する事ができるのです。
それではまずは室内発生熱の求め方。
こちらは定数(決まった数値)4.65×床面積で導き出されます。
今回の事例では床面積は120㎡ですので
4.65×120=558W
日射取得熱は敷地の条件(敷地の場所や方位、近接建物との距離、庇のなどなど)
などによって変わってきますので難しいところですが、QPEXを活用すれば
求める事が出来ます。ただいま計画中のお家、田辺地方で建物が東南を向いている
ものを入力してみますと 794Wとなりました
室内発生熱558W、日射取得熱は794W この2つの熱を活用できるので
6480W-558W-794W=5,128W
つまり暖房器具の熱は5.128KW必要となります。
さぁ光熱費 このお家の燃費はいかほど?
和歌山県の田辺市は全国的に見ても暖かい地域になります。
ですので室外の気温が0℃になる日、なる時間は少ないので実際は冬の季節に
毎日5.128KWのエネルギーを使わなくても20℃を保つ事が出来ます。
このあたりもQPEXで地方地点を入力する事で導く事ができまます。
結果は 4.83KW の熱でまかなえると出ました。
恐るべしQPEX!
燃費が分かると電気代も
なるほど、4.83KWでいいのか~、納得納得 とはならない訳で(笑)住まい手にとっては
その数字が生活にあてはまって、つまり光熱費に出てきて初めて実感が出るわけですが、
しつこいようですが(笑)これもQpexで導き出されます!
それによりますと1年間で暖房に使うエネルギーは灯油ですと552ℓ、
エアコンCOP3.0として1610Kwhとなりました。
電気代を1kwh30円とした場合、1年間で暖房に使う電気代は
1610 × 30 = 48,300円也
ここまで分かってやっと住まい手にお家の断熱性能とお家の燃費性能
(光熱費)をひとくくりに感じて頂く事が出来てくるわけです。
まさしく『温熱性能の見える化』となるのです。
まとめ
ついつい、断熱性能を示すQ値やUA値などの数値、数字が独り歩きしてしまう恐れが多々あります。
1年間を通して快適な温熱環境を、少ないランニングコストで行うのが温熱性能の目的なのに
それを求める為の一つ前の断熱性能だけが注目されがちなってしまいがちです。
目的を見失わずに燃費性能で検討する事をお勧めします。
『新住協』で先導的に実践されている方々の御指導をあおぎながら私も
『温熱性能の見える化』精度を高めていきます。
『新住協』のQpex以外にも様々な燃費シミレーションソフトがあります。
工務店や設計事務所さんの得意なソフトで検証して頂くことをお勧めします。
断熱性能は新築の時に向上しておかないとあとから、リフォームでとなると
大変です。イニシャルコストとランニングコスト。
この場合では建築費用と光熱費の検討をしっかりして、コストバランスのとれた
家づくりを進めて行ってください!