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左官仕上げの美と機能を両立|そとん壁でつくる経年美の家づくり

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「そとん壁」という選択肢、知っていますか?

長く愛せる家にしたい」「自然素材の温もりを感じる住まいにしたい」——そんな想いで家づくりを考えている方にとって、外壁選びは決して軽く見過ごせない重要なポイントです。機能性だけでなく、見た目の美しさや、経年による味わいの深まりまで考えると、選択肢は一気に狭まってきます。

そのなかで今、注目を集めているのが 「そとん壁」。しかし「左官仕上げってメンテナンスが大変なのでは?」「価格が高そう」といった疑問や不安の声も少なくありません。

和歌山県田辺市を拠点に、20年以上にわたり自然素材住宅を手がけてきました。また、このそとん壁を積極的に採用しており、豊富な施工実績を通じてそのメリット・デメリットを熟知しています。本記事では、そとん壁の素材特性、性能、デザイン性、施工のポイント、そして注意点までを実例と共に詳しく解説しています。

自然素材の風合い、左官職人の手による唯一無二の表情、メンテナンス性と耐久性の両立——これらすべてを備えたそとん壁の魅力が、きっとあなたの家づくりの価値観を一歩深めてくれるはずです。

この記事を読むことで、外壁材としてのそとん壁の本当の実力と適正な判断材料を得ることができ、後悔しない家づくりに繋がります。

自然と調和し、時とともに味わいが増す。そんな外壁材を探している方にこそ読んでほしい、必読の一記事です。

この記事で得られる5つの答え

・そとん壁とは何か?
天然素材シラスを原料とした左官仕上げの外壁材で、手仕事ならではの風合いと高い機能性を兼ね備えている。

・そとん壁のメリットは?
耐候性・耐久性に優れ、カビに強く、経年によって美しさが増す自然素材ならではの魅力がある。

・そとん壁のデメリットは?
施工に天候の影響を受けやすく、汚れの発生や清掃の手間、施工者の技術が必要とされる。

・どんな人に向いている外壁材か?
自然素材や職人の手仕事を重視し、長期的な美観と性能、経年変化の美しさを楽しみたい人に適している。

・そとん壁を選ぶ際の注意点は?
地域の気候特性に応じた施工・メンテナンス計画が重要で、信頼できる施工業者を選ぶことが成功の鍵となる。

 

1. そとん壁とは何か?

1-1. そとん壁の基本的な素材と成分

そとん壁は、「シラス」と呼ばれる火山噴出物を主成分とした、自然素材の外壁仕上げ材です。このシラスは、マグマの噴火によって自然に焼かれた無機質素材であり、人工的に高温で再焼成する必要がないことから「焼かない」壁材とされています。

焼成工程を省略することで、製造にかかるエネルギーを大幅に削減でき、環境への負荷が小さい点が大きな特徴です。加えて、自然の火山活動によって生成されたセラミック質の成分は、非常に安定した構造を持ち、耐久性や防火性に優れています

シラスは極めて細かい粒子で構成された素材で、そのまま外壁として使用することで高い耐候性と耐久性を発揮します。表面には自然な凹凸があり、紫外線や風雨に対して強い耐性を持つとされ、経年による劣化が緩やかである点が評価されています。防水塗装を施さなくても、素材そのものが優れた防水性を備えており、長期にわたって外壁の機能を保つことが可能です。

また、そとん壁は無機質素材であるため、有機物を必要とするカビの繁殖が非常に起こりにくいという特性も持っています。実際、多くの施工事例でも長期間にわたりカビが発生しにくいという報告があり、防カビ性能の高さがうかがえます。

総じて、そとん壁は「自然素材でありながら高機能」という点で非常に優れた外壁材です。環境負荷の少なさ、健康への安全性、そして長寿命という観点から、住宅だけでなく公共建築物にも適した外壁材として注目を集めています

1-2. そとん壁の施工方法とその特徴

そとん壁の施工は、左官職人の手仕事によって仕上げられる、日本の伝統的な外壁工法です。自然素材であるシラスを活かしながら、職人がコテで塗り上げていく工程はまさに手づくりの美しさが宿る仕事です。外壁材としての機能性と意匠性を高い次元で両立する点が、そとん壁の魅力です。

そとん壁の施工工程は「下塗り」と「上塗り」の2層構造で成り立っています。下塗りには超微細なシラスを使用し、密度の高い層を形成します。上塗りにはやや粗い粒子のシラスを用い、質感や風合いを演出します。この2層構造によって、雨水が浸入しにくい物理的バリアが形成され、「くの字流動現象」と呼ばれる雨水の排出機能が働くことで、高い防水性が実現されます。

仕上げの種類には「掻き落とし仕上げ」や「スチロゴテ仕上げ」があります。掻き落とし仕上げは、塗布した上塗りが半乾きの状態になった時点で、表面を金物で削り落として質感を出す手法です。スチロゴテ仕上げは、塗布後にスチロール製のゴテでやさしく押さえ、滑らかで均一な表情を出す方法で、どちらも左官職人の手作業ならではの深みある外観を生み出します

施工には注意点もあります。そとん壁は降雨の予報がある場合、特に上塗り工程では雨養生が必須となり、気象条件に工期が大きく左右されます。48時間以内に降雨が予想される場合は施工を控えるべきであり、予定通りの進行が難しい場合もあります。このため、工期に余裕をもった計画が必要です。

また、濃色のそとん壁を冬季に施工する際には「白華現象」と呼ばれる白っぽい変色が発生するリスクもあります。これは気温や湿度の影響を受けるもので、素材の特性を理解した左官業者による施工が重要です。左官の技術力と素材への理解が、そとん壁本来の性能と美しさを最大限に引き出す鍵となります

1-3. 歴史的背景と日本での利用状況

そとん壁が日本の住宅建築に本格的に採用され始めたのは、2000年代初頭のことです。当時は窯業サイディングが主流で、外壁材の多くが工業製品で構成されていました。しかし、サイディングは継ぎ目にコーキングが必要で、経年劣化による補修や塗り替えが避けられないという課題がありました。こうした背景から、シームレスで美しく、かつメンテナンス性に優れた外壁材を求める声が高まり、そとん壁が注目されるようになったのです。

そとん壁は、自然素材であるシラスを使用していることに加え、日本の伝統的な左官技術と相性が良い点も受け入れられやすい理由の一つでした。とくに「素材の持つ風合いを大切にしたい」「時間の経過と共に味わいを深めていく外観が欲しい」と考える設計者や建て主にとって、そとん壁は理想的な選択肢となりました。

また、そとん壁が広まるきっかけのひとつに、建築家・伊礼智氏の存在があります。伊礼氏は、シームレスな左官外壁の魅力を積極的に提案し、自らの設計する住宅に取り入れてきました。特に「W-129(通称:伊礼色)」などの色味は、多くの設計者に支持され、そとん壁の普及を後押しする要因となりました。

そとん壁は住宅だけでなく、設計意図や美観を重視する公共建築や商業施設でも採用が進んでいます。その美しさや性能の高さに加え、ローテクで環境に優しい製造工程が注目され、地方の農家が素材の加工に関わる「新・二毛作」としての取り組みも社会的意義を持っています。

こうして、そとん壁は一過性のブームにとどまらず、日本の風土や住まい方に根差した外壁材としての地位を確立しました。シラスという天然素材と、職人の技術、設計者の思想が融合したそとん壁は、今後も長く愛される建材として住宅文化に寄与していくことでしょう。

1-4. 他の外壁材との違い

そとん壁は、窯業サイディングやモルタル壁といった一般的な外壁材と比較して、いくつかの明確な違いがあります。最も大きな特徴は、左官職人による手仕事で生まれるシームレスな仕上がりです。サイディングのように継ぎ目が存在せず、外観の美しさが長く保たれる点がそとん壁の大きな魅力といえます。

窯業サイディングは工場で大量生産された板材を貼り合わせて施工するため、継ぎ目にコーキング材を使用します。このコーキングは経年劣化しやすく、5~10年ごとに打ち替えや塗装のメンテナンスが必要となります。一方、そとん壁は塗装やコーキングに頼らず、素材そのものの性能で防水性や耐候性を維持するため、メンテナンスコストが低く抑えられます

モルタル壁も左官仕上げではありますが、防水性を確保するためには表面に塗装が必要です。塗装の劣化によって水分が侵入し、ひび割れや浮きといった問題が生じやすいのが難点です。それに対してそとん壁は、素材自体が高い防水性を持ち、塗装に頼らずとも長期間安定した性能を発揮します

また、そとん壁は無機質の天然素材であるため、カビの養分となる有機成分を含まず、防カビ性にも優れています。これにより、汚れや黒ずみが付きにくく、特に日当たりや風通しの悪い場所でも清潔感を保ちやすいのが特徴です。

最後に、意匠性の違いも無視できません。サイディングや塗装では表現しきれない自然な風合いや立体感を、そとん壁は左官仕上げによって生み出します。素材感のある表情、柔らかな陰影、そして手仕事ならではの温もりは、住まいの外観に独特の個性と上質さを与えてくれます。

1-5. メンテナンスと耐久性について

そとん壁の大きな特徴のひとつは、無機質素材で構成されているため、一般的に劣化やカビの繁殖が抑えられやすい点です。静電気の発生も少なく、ホコリなどの吸着が起こりにくいため、汚れにくい外壁材として高い評価を得ています

とはいえ、外から飛んでくる有機質分(ホコリや花粉など)がそとん壁の表面にある微細な凹凸部分に付着し、それが溜まることでカビや藻が発生するケースもゼロではありません。特に風通しが悪く、直射日光が当たりにくい北面などでは黒ずみが見られることもあります

そうした汚れが発生した場合でも、そとん壁の清掃は比較的容易です。たとえば黒カビのような汚れには、キッチンハイターの原液を直接スプレーし、20分ほど放置。その後、水8リットルに対して中性洗剤を2~3滴混ぜた液を用い、歯ブラシやたわしで軽く擦り洗いを行うことで、かなりきれいに落とすことができます。

雨だれ程度の汚れであれば、キッチンハイターを使わず中性洗剤のみで対応可能なケースもあります。必要以上に強く擦る必要はなく、優しくなでるように掃除するだけで十分にきれいになります。施工から数年が経過しても、適切なメンテナンスを行うことで、そとん壁の美観を長く保つことができます。

まとめとして、そとん壁は「メンテナンスフリー」ではありませんが、定期的なお掃除というシンプルなケアを施すことで、美しさと性能を持続させることができます。素材にしっかりと向き合い、適切な手入れをしながら付き合っていくことで、時と共に味わい深さが増し、新築時とは異なる、経年美化の魅力を楽しむことができる外壁材です。

そとん壁汚れのお手入れとメンテナンス性

2. そとん壁のメリット

2-1. 自然素材による健康への配慮

そとん壁の最大の特徴の一つは、シラスという自然素材を主原料として使用している点にあります。シラスは約2万5千年前の火山活動によって噴出した火砕流が堆積してできた物質で、無機質かつ有害な化学物質を一切含まない、極めて純粋な天然素材です。

この無機質な構成により、そとん壁はホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を発生させることがなく、住む人の健康に配慮した安心安全な素材といえます。特に小さなお子様や高齢者のいる家庭では、室内外における化学物質の影響をできるだけ避けたいというニーズが高まっており、そとん壁はそうした家庭にも適した選択肢です。

また、そとん壁の主成分であるシラスは非晶質(アモルファス)構造を多く含んでおり、この構造が触媒反応を引き起こしやすく、環境中の有害成分を分解・無害化する可能性があると指摘されています。つまり、見えない部分でも空気の質を整える助けとなる素材なのです。

一般的な外壁材に使われる塗料や接着剤などは、有機成分を含むためにどうしても劣化や化学反応を起こす可能性がありますが、そとん壁は完全無機素材であるため、こうした経年による化学的な変質が起こりにくいのも大きな利点です。

自然素材を使うということは、建物に使われる素材の“質”を重視するという考え方でもあります。見た目の美しさだけでなく、住まい手の健康や、長く暮らすことによる安心感まで見据えた素材選びとして、そとん壁は非常に理にかなった外壁材だといえるでしょう。

2-2. 高い耐候性と耐久性

そとん壁が支持されるもう一つの大きな理由は、極めて高い耐候性と耐久性にあります。シラスという天然のセラミック質素材は、マグマによって自然焼成された無機質であり、紫外線や風雨に対して非常に強い耐性を持ちます。そのため、経年劣化しにくく、長期にわたって美観と性能を保つことができます。

一般的な外壁材である窯業サイディングやモルタル塗装仕上げは、表面の塗膜が紫外線で劣化しやすく、5〜10年ごとの再塗装が必要になりますが、そとん壁には塗膜が存在しないため、こうしたメンテナンスは基本的に不要です。素材そのものが持つ性質で機能を維持するため、長寿命な外壁材として非常に優れています

さらに、そとん壁はコーキング材を使用しないシームレスな施工が可能なため、継ぎ目からの劣化や雨水侵入のリスクも極めて少なくなります。これにより、外壁全体としての劣化要因が抑えられ、トータルでの耐久性が格段に高まります。

実際の現場でも、10年以上経過したそとん壁の住宅で目立った劣化や剥離が見られないという報告が多く、施工後の安定性も高く評価されています。また、退色が起こりにくいことから、美観の維持という面でも非常に優秀な外壁材といえるでしょう。

初期コストはやや高めではありますが、再塗装やコーキング補修といったランニングコストがほとんどかからないことを考慮すると、長期的には経済的な選択といえます。そとん壁はまさに「手間なく、長く、美しく」を実現する外壁材として、信頼される理由があるのです。

2-3. デザイン性と質感の魅力

そとん壁の魅力のひとつに、そのデザイン性の高さと、自然素材ならではの質感があります。一般的な外壁材と違い、既製品ではないため、ひとつひとつの住まいに合わせて職人の手で仕上げられ、外観に個性と温かみを与えてくれます

そとん壁の仕上げは、「掻き落とし仕上げ」や「スチロゴテ仕上げ」など、質感や陰影の異なるパターンから選択できます。掻き落としはラフで表情豊か、スチロゴテは柔らかで落ち着いた印象を与え、住まいのコンセプトや景観に応じた表現が可能です。

色味においても、そとん壁は顔料に天然の砕石を用いており、経年での退色が少ないのが特徴です。特に人気の「W-129(通称:伊礼色)」や「W-121」など、和の景観や自然素材との相性が良い色が多く、素材感と調和した美しい仕上がりが実現できます

加えて、コーキングが不要で継ぎ目がない“シームレスな仕上がり”は、外観の美しさを格段に高めます。線のない連続的な壁面は、建物のフォルムを際立たせ、光の当たり方や時間の経過によって豊かな陰影をつくり出します

このように、そとん壁は「塗る」という行為そのものにデザインの可能性があり、単なる仕上げを超えた意匠の一部として住宅の表情を作り上げます。見た目の美しさに加えて、触れたときの質感や陰影の変化も楽しめる、奥行きのある外壁材といえるでしょう。

そとん壁 色と仕上げ方 白華とW‐129色とW-121色とW-126色

2-4. 左官職人の技と手仕事が活きる外壁

そとん壁の魅力は、単に素材の性能だけにとどまりません。最大の特長のひとつは、左官職人による“手仕事”がそのまま外壁に反映されるという点です。大量生産された外壁材では表現できない繊細な仕上がりは、職人の技術と経験があってこそ実現します。

施工の際には、材料の練り方、塗りつけの厚み、タイミングなど、細部にわたる判断が必要です。季節や天候によっても乾き方や仕上がりが変化するため、職人はその日の環境に合わせて微調整を行いながら作業を進めます。これはまさに「技」の世界であり、量産品にはない個性と奥行きを建物に与えてくれます

仕上げ方法にも多彩な選択肢があり、「掻き落とし仕上げ」では手作業によるザラリとした質感、「スチロゴテ仕上げ」ではやわらかく滑らかな風合いが表現されます。これらは左官職人の技術と感性に委ねられ、同じ素材を使っても全く異なる表情を見せてくれます

また、そとん壁の施工は「建材を貼る」のではなく「素材を塗る」という行為であるため、家そのものが職人の手で“造られていく”という感覚が強くなります。こうしたプロセスに価値を感じる建主も少なくありません。

このように、そとん壁は単なる外壁材ではなく、手仕事の価値を住まいの一部として形に残すことができる素材です。完成した壁面には、その家のためだけに施された“唯一無二の仕上がり”が宿り、年月とともにさらに味わいが増していきます。

2-5. 環境への配慮と持続可能性

そとん壁は、環境への配慮という観点からも非常に優れた外壁材です。その主原料である「シラス」は、火山噴出物として自然界に大量に存在し、人工的に採掘・精製される素材と比べて環境負荷が非常に少ないのが特徴です。

製造過程においても、そとん壁は高温での焼成や大量のエネルギーを必要とない「ローテク」な方法で作られています。実際には、農家の納屋で手作業により加工されるという、人の手による地道な工程で成り立っており、大規模な工業的製造とは一線を画しています

また、製品には防カビ剤や防腐剤といった化学薬品を含まず、使用後も自然に還る素材である点も注目されています。建物の解体時にも有害物質を出さず、廃棄物としての環境影響も最小限に抑えられます

加えて、そとん壁の耐久性が非常に高いため、建て替えや外壁の再施工といったライフサイクル全体における環境負荷も低減されます。「長く使えること」自体がエコであり、持続可能な住まいづくりに貢献する選択肢といえるでしょう

このように、そとん壁は素材調達から製造、使用、廃棄に至るまでの各段階で環境配慮がなされており、サステナブルな建築を目指す現代の住まいにふさわしい外壁材です。環境負荷の少ない住まいを望む方にとって、そとん壁は理想的な選択といえるでしょう。

3. そとん壁のデメリット

3-1. 初期費用の高さ

そとん壁は多くのメリットを持つ優れた外壁材ですが、唯一の大きなハードルとして挙げられるのが、施工時の初期費用の高さです。一般的な窯業サイディングやモルタル塗装仕上げと比べると、材料費も施工費も高くなる傾向があります。

そとん壁は自然素材を用い、さらにすべて左官職人の手作業で仕上げるため、どうしても人工費が高くつきます。加えて、仕上げに時間がかかる分、人件費が上乗せされ、工期もやや長くなることがあります。

一般的な住宅では、外壁工事のコストは総建築費の中でも大きな割合を占めるため、そとん壁を選ぶことによって全体の予算がオーバーしてしまうというケースも少なくありません。コストとのバランスを考慮した選択が必要です。

しかし、10年、20年といった長期的な視点で見れば、再塗装やコーキングの打ち替えといったメンテナンスが不要であるため、トータルのコストパフォーマンスでは有利になる場合もあります。短期的なコストと長期的な維持費用を天秤にかけた検討が重要です。

最終的には、「見た目の美しさ」「素材の信頼性」「手仕事の価値」に対して、どれだけのコストを許容できるかが判断のポイントとなります。コスト面のデメリットを正しく理解したうえで、その魅力を選ぶ覚悟が求められます。

3. そとん壁のデメリット

3-2. 施工に熟練技術が必要

そとん壁は、美しい仕上がりと高い性能を持つ外壁材ですが、それを最大限に引き出すためには、熟練した左官職人の技術が不可欠です。素材が良くても、施工の質が伴わなければ、本来の美観や耐久性は発揮されません。

そとん壁の仕上げには、塗り厚、乾燥のタイミング、気温・湿度の判断など、細やかな調整が求められます。特に掻き落とし仕上げやスチロゴテ仕上げは、職人の手加減ひとつで風合いが大きく変わるため、経験と感覚の両方が問われる作業です。

左官職人の技術不足により、塗りムラや表面の割れ、雨染みなどの不具合が発生するケースもあります。また、施工途中の天候変化に迅速に対応できない場合は、乾燥不良や白華などのトラブルを引き起こすこともあります。

したがって、そとん壁を採用する際は、施工実績が豊富で、そとん壁の特性を熟知した信頼できる左官業者を選ぶことが極めて重要です。建築士や施工店と連携し、事前に十分な打ち合わせを行うことも欠かせません

逆に言えば、腕のある職人が施工すれば、そとん壁は唯一無二の美しさを持つ外壁として仕上がります。その価値を十分に引き出すためにも、技術力に裏打ちされた確かな施工体制が成功の鍵となります

3. そとん壁のデメリット

3-3. カラーや仕上げの制限

そとん壁は自然素材ならではの魅力がありますが、その一方で色や仕上げに関する選択肢には一定の制限があります。そとん壁の色味は、天然鉱物や石材を原料とした顔料によって表現されており、化学塗料のような鮮やかな発色や自由度の高いカラーバリエーションは期待できません

たとえば、濃い色合いを求める場合には注意が必要です。そとん壁は顔料を使った無機質の着色であるため、特に黒や濃紺などの深い色は難しく、淡色や中間色が中心となります。これは素材の特性上、色ムラや白華の発生を防ぐための制約でもあります。

また、そとん壁は塗装による着色ではなく素材そのものに色が練り込まれているため、施工後の「塗り替え」や「色変更」がほぼ不可能です。外観に大きな変更を加えたいと考えても、そとん壁の場合は新たに塗り直す必要があり、手間とコストがかかる点もデメリットの一つです。

仕上げの面でも、掻き落としやスチロゴテなど左官技法に基づく伝統的なパターンが中心となり、現代的でシャープな印象の外観を求める場合には合わないこともあります。デザインの幅がある一方で、素材と技法の相性を踏まえた表現に限られるという面も理解が必要です

したがって、そとん壁を選ぶ際には、仕上がりのイメージを事前にしっかり確認することが重要です。サンプルを取り寄せたり、実際の施工例を見学することで、自分の希望する色や質感がそとん壁で表現できるかを確認しておくと、後悔のない選択につながります。

3. そとん壁のデメリット

3-4. 汚れやすさと清掃の難しさ

そとん壁は無機質素材であり、基本的にはカビや汚れが付きにくい性質を持っていますが、それでも環境条件によっては汚れが目立つことがあります。特に、日当たりが悪く風通しの悪い北側の壁面では、雨水が流れにくく、ホコリや有機物が付着して黒ずみや藻が発生しやすくなります。

また、そとん壁は表面がざらざらしたテクスチャーのため、サイディングやタイルに比べて汚れが凹凸部分に溜まりやすいという特徴もあります。とくに排気口のまわりや雨だれが集中する箇所は、部分的に汚れが蓄積しやすい傾向があります。

汚れが目立ってきた場合には、キッチンハイターや中性洗剤を使用し、歯ブラシや亀の子タワシなどで優しく擦るという掃除方法が推奨されています。ただし、あまり強く擦ると表面の風合いが損なわれることがあるため、力加減には注意が必要です。

清掃は難しい作業ではありませんが、脚立や水洗いのための道具が必要になるため、ある程度の労力と準備が必要です。高所の壁面では安全面を考慮し、専門業者への依頼も視野に入れるとよいでしょう。

このように、そとん壁は「まったく汚れない」わけではなく、適切なタイミングでの手入れが必要です。とはいえ、表面の素材自体にカビや藻が繁殖しにくいため、基本的な清掃だけで美観を維持しやすいという点は、他の外壁材に比べても大きなアドバンテージです。

3. そとん壁のデメリット

3-5. 地域や気候による適合性の違い

そとん壁は優れた性能と美しい意匠性を兼ね備えた外壁材ですが、地域や気候条件によっては施工や維持に配慮が必要なケースもあります。特に高温多湿な地域や、寒冷地などでは注意すべきポイントがいくつかあります。

湿度の高い地域では、北側の壁面や植栽の近くなど風通しが悪く日当たりの少ない場所に、カビや藻が発生しやすくなります。また、海が近いエリアでは塩分を含んだ風の影響で汚れが付着しやすくなることもあるため、施工後の定期的な観察が重要です。

一方で、寒冷地では冬季の施工に注意が必要です。特に気温が低い時期に濃色のそとん壁を施工すると、白華現象(表面が白くくもる現象)が起こる可能性が高まります。これを防ぐには、施工時期の選定や適切な養生が求められます。

また、極端な寒暖差のある地域では、乾燥の進み具合や素材の伸縮にも影響が出る可能性があります。そのため、経験豊富な左官業者による施工管理が不可欠であり、気候条件を理解した上でのプランニングが大切です。

このように、そとん壁は全国どこでも施工可能ではあるものの、気候特性に応じた対応が求められる外壁材です。事前に地域ごとの注意点を把握し、設計・施工・メンテナンスの各段階で適切な判断を下すことで、その魅力と性能を最大限に活かすことができます。

そとん壁 メリット デメリット 風合と質感のある手作りの素材を職人の手仕事で仕上げる

まとめ

この記事では、自然素材である「そとん壁」について、その成分・施工方法から始まり、メリットとデメリットまでを幅広くご紹介しました。そとん壁はシラスという火山噴出物を主原料に、左官職人の手仕事で仕上げられる独自の外壁材であり、その魅力は単なる機能性だけでなく、美しさや環境性能にも表れています。特に、塗装を必要としない無機素材ならではの耐久性と、職人の技によって生まれる唯一無二の質感は、他の外壁材では得がたい特長です。

一方で、施工に熟練の技が必要であったり、初期コストが高いなどの課題もあり、どんな住まいにも無条件でおすすめできるわけではありません。しかし、それらを理解した上で適切に施工し、必要な手入れを続ければ、長い年月をかけて深みを増し、住まいと共に成長するような「経年美」を楽しめる稀有な素材です。外壁は家の“顔”であり、風雨から建物を守る大切な要素でもあります。機能性と美しさ、そして環境負荷への配慮を重視する方にとって、そとん壁は非常に有力な選択肢となるでしょう。後悔のない家づくりのためにも、ぜひ実際に見て、触れて、その魅力を体感してみてください。

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